昨年9月に建物の建設に着工した後、住民は説明会を要求。自治会や行政を間に挟むなどして、昨年12月、今年1月、2月の計3回実施した。そこでの運営会社の対応が、住民側の態度を硬化させた。
「私たちの地域には障がい者も暮らしていますし、差別や偏見はありません。福祉や障がいについて地域で勉強もしています。問題にしているのはこの運営会社です」
そう指摘する古参住民は、説明会の際の横暴な対応にあきれ果てたという。
「運営会社の社長から“こっちはいいことやっているんだ! お前らボランティアしろ!”と怒鳴られ“差別だ!”と威圧されました」
と不快そうに振り返り、
「『外で肩を叩いてくるかもしれません』とか『事件事故が起きないとは100%約束できない』『施設の外で何か起こったら当事者同士で解決してくれ』など、住民の不安をあおる発言をするんです」
同じ説明会に参加した60代の男性も、「社長が声を荒らげ、障がい者が近隣の家に入っても責任は取れない、と言い切るなど横柄だった」と上から目線の物言いに嫌悪感を抱いたという。そして、
「あくまで事業者の説明が不足していることが問題。この事業者には撤退してほしい」と付け加える。地域の一員として住民とうまくやれる事業者であれば歓迎するという意見は、多くの住民が口にした。要するに“ノー・モアナケア”ということだ。
前出の運営側弁護士も、
「ボタンの掛け違い、売り言葉に買い言葉、そんなところもあったと思います。施設自体が反対されているので、防衛的に対応したことがあったかもしれません」
地元住民のリアルな声
一帯は閑静な住宅地で、グループホームから徒歩1~2分圏内に幼稚園、小学校、中学校が隣接し、約2000人の子どもたちが通園・通学している。そのため反対派住民が立てている幟には、「子どもたちの安全を守れ」という不安も書かれている。
近隣に住む40代女性は、
「外出中に付き添いもなく、入居される障がい者のレベルがわからないことが不安です」
と本音を明かす。
「突然、奇声を上げられたり夜道で出てこられたらびっくりするかも」(30代主婦)
小学生の子どもを持つ40代女性は、
「子どもは学校終わりに習い事もあるので、帰宅途中が本当に心配です。過去に子どもが障がい者にいたずらされたという経験があるので……」
その一方で、「障がい者の行き場がなくなるので反対運動は間違っている」(80代女性)、「管理がしっかりしていれば問題ない」(20代主婦)、「障がい者との交流は子どもたちにも勉強になる」(60代男性)という賛成の声もある。