生きたカビが身体にすみつく
通常、体内に入ったカビは死んでしまうが、なかには生きのびて増殖するものもある。
「アスペルギルスというカビがそうです。アスペルギルス症が原因で亡くなる方は着実に増えているのです」
アスペルギルスは、実は、酒やみそ、しょうゆなどを作るコウジカビの仲間。
「空気中に漂うカビの1割はアスペルギルスといわれていて、その中には感染力の強いものもいます」
アスペルギルスを吸い込むと、健康な人は免疫のシステムがやっつけてくれるが、白血病などで、免疫が弱っていると肺や気管支にすみつき菌のかたまりをつくる。
「また、免疫力には問題はなくても、肺結核を患った人、タバコの煙などが原因で肺に炎症が起きるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のように、タバコを吸う習慣がある人はリスクが高くなります。肺に傷ができていたり老化が進んでいたりして、カビのすみやすい環境が整っているからです」
カビの増える条件は酸素、水、栄養。その3つが肺の中にはそろっている。
「肺にアスペルギルスがすみつくと、毒素を出して細胞を壊し続けて肺に穴をあけることもあります」
症状は咳、たん、発熱など。血液がまじったたんが出ることもある。アスペルギルスが肺全体に広がると、最悪の場合、死に至ることもあるという。
「治療は主に抗菌薬の投与で、菌のかたまりが肺の一部にとどまっている場合は、手術で切除することもあります」
抗菌薬の治療は数年かかることが多く、完治もなかなか難しいそうだ。