薬が効かないことも
カビは土壌や空気中に存在するため、真菌感染症は肺や皮膚から感染することが多い。皮膚や粘膜からの感染で代表的なのは、水虫やカンジダ症。
「水虫は最近、新しい薬が出て、以前よりも治療しやすくなってきてはいますが、いまだに根治が難しい病気です。というのは、真菌はウイルスや細菌に比べると生物学的には人間に近く、真菌を殺す薬は人間の細胞もダメージを受けるからです」
これは、前述したアスペルギルス症の治療期間が長びく理由でもある。
「そもそも薬の種類が少なく、さらに薬に対する耐性菌も出ていますので、薬が効かないこともあります」
真菌感染症の予防策はカビを体内に入れないこと。家の中のカビを減らすことがポイントだ。
「掃除と室内の換気をまめに行いましょう。空気が滞るとカビが増殖します。アスペルギルス症を発症した患者の家の環境を調べたところ、空気中に通常の40倍ものアスペルギルスがいた、という例もありました」
そこで重要なのがエアコンの掃除だ。
「もともとエアコンにはカビが生えやすい条件がそろっています。フィルターをまめに掃除することはもちろんですが、暑い時期になってエアコンのスイッチを入れる前に、専門業者による掃除をするのがオススメ。エアコンの中に発生したカビは、素人では手が届きません」
夏はエアコンをつけたら止める前に、しばらく送風にしておくのも中が乾燥してカビ対策になる。
「最近のエアコンは送風機能がもともと備わっているものがあるので、これを無理に止めないようにしましょう」
除湿器にもカビが発生しやすい。掃除をしてから使うようにしよう。
「カビ毒の中毒を防ぐには、なにより、カビの生えたものを食べないようにしましょう。目に見えないところまで広がっているので、カビの生えた部分だけ取り除いて食べても、カビは体内へ入ってしまいます」
たとえ熱処理をしても、カビが出す毒素は安定した物質なので、身体の中に入ってしまうそうだ。カビ対策に力を入れて、真菌感染症を万全に予防しよう!
《PROFILE》
亀井克彦さん ◎千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野教授。カビが内臓に感染する病気の専門家として千葉大学医学部附属病院感染症内科で真菌症専門外来を担当