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老後2000万円問題」の波紋が広がっている。金融庁の金融審議会が公表した報告書のなかで、「年金だけでは毎月5万円の赤字で、老後に2000万円が必要」とした内容に批判が殺到。諮問したはずの麻生太郎財務相は報告書を「受け取らない」と発言、政府は該当部分を削除したが、各世論調査で内閣支持率は軒並み低下している。

 淑徳大学の結城康博教授(社会保障論)は「政府は火消しをしようとしていますが、今回話題となった老後2000万円問題は、受給するのが厚生年金か、国民年金だけかによっても話は違ってくるはずです」と話す。

金融庁の発表の仕方もあいまいだった

 さらに、(1)国民年金同士の夫婦、(2)厚生年金と国民年金の夫婦、(3)厚生年金同士の夫婦の3パターンに分けて議論すべきだと主張する。

「(1)の場合は、必要な生活資金はお互いに2000万円になります。(2)の場合、たいていは男性が働き、女性は専業主婦という家庭。夫が1000万円、妻が2000万円必要になります。(3)の場合、夫婦ともに1000万円ずつ必要です。金融庁はケース・バイ・ケースで発表すべきでした」

 金融庁の報告書では、夫がサラリーマンで妻が専業主婦という“標準的な世帯”が試算の前提となっている。ひとり暮らしが増えるなど「世帯が多様化している」ことを認めているものの、具体的には触れていない。

「ただし、医療保険や介護保険などの制度をフルに使い、早い段階から評判のいい介護事業者などの情報収集をすれば、(2)の場合、およそ550万円の老後資金でも生き抜けるはずです」

 人生100年時代に問題となるのはお金だけではない。認知症になったらどうするか。在宅介護か施設入所か、延命措置は必要か……。今回の問題をきっかけに「これからの老後の話をしよう」と、結城教授は提案する。

「まだ親が元気なうちに、年金老後資金がいくらあるのか聞いておいたほうがいい。早く死んでほしいのかと疑われたり、財産目当てと責められたりするかもしれませんが、娘が話せば意外と聞く耳を持ってくれたりしますから。そのうえで、もしぜいたくな暮らしぶりであれば、極貧にする必要はないですが生活を質素にしておくべきでしょう」