理由その3:
「母として」という言葉のあいまいさ

 国会内で出馬会見をした市井は、子育てに関する政策が不十分なことを挙げ、その理由を「現役のお母さんが政治の世界に少ないから」と分析しています。しかし、「現役のお母さんとして」の視点が何なのかは、明らかにされていません。

 ひと言で「お母さん」といっても、境遇や信条などいろいろなタイプの「お母さん」がいて、困っていることも人それぞれです。どのゾーンの「お母さん」もしくは「子ども」を助けたいのか、具体的な政策として訴えないと、最大のターゲット層である「現役のお母さん」の支持は集まらないのではないでしょうか。

 #MeToo運動以降、女性のあり方について個人が意見を述べる流れが続いています。同じ女性だから、私もお母さんだから支持するというほど、有権者は甘くないと思うのです。

 そうは言っても、参院選での芸能人の当選率は高いと言えるでしょう。実績のない芸能人が当選しているということは、有権者も知名度の高さには逆らえないということ。政治家を知名度で選んでしまう、われわれ有権者もヤバいのです。

 それでは、なぜ知名度の高い人が票を集めてしまうかと言うと、「誰に投票したらいいかわからないから」という面もあると思うのです。政治家がどんな活動をしていて、どんな考えを持っているのかを知る機会はほとんどないと言っていいでしょう。

 ですから、ぜひ大衆認知に長(た)けたテレビで、選挙前だけでなく定期的に政治家の討論番組をやってほしいと思うのです。有権者は普段から政治家の活動について知ることができますし、政治家も自分をアピールするいい機会になるでしょう。政治を身近に語ることができるようになれば、政治家の質も向上していくのではないでしょうか。

 政治は生活に密接に結びついています。暮らしをよくするために、有権者ができることは、投票に行くこと。この国がヤバくなっていくのか、それとも持ち直すかは有権者次第なのです。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。