実際にあった“同質いじめ”
「私は中学の3年間ずっといじめを受けていました。親同士も仲よくて、土日も一緒にいることさえあって頭がおかしくなりそうでした」
と話すのは高校2年生の翔子さん(17・仮名)。いじめを受けていたころのことを思い出すと今でも息苦しくなるという。
「B子とは幼稚園のときからずっと一緒で母親同士もずっとママ友。関係が変わったと感じたのは中学1年生で私が初潮を迎えたとき。私もB子も生理がくるのが遅くて男じゃないかと心配してお互いが支えみたいなところがあったんです。先に私に初潮がきたときのB子の怖い顔は忘れられません」
その直後からいじめが始まったという。
「私が悪口を言っているとほかの友達にウソをついて孤立させられた。B子だけが知っている私の秘密もばらされた。B子の母親がうちに遊びに来ているときに、B子は私のパソコンからC(別の同級生)のケータイに悪口を送り私が送ったことにされた。
親しい間柄を利用して私が嫌なやつだと印象づけられた。母親に言っても“B子ちゃんママは私の友達だから”とかわけのわからないことを言われて取り合ってもらえなかった。担任に言っても、私がB子をイジメているという噂を信じていて逆に怒られました」
翔子さんは絶望して2度手首を切ったという。その傷痕を見せながら話す。
「もう死ぬかB子を殺すことしか考えられなくなっていた。救いは中学2年生から塾でのクラスが変わったこと。勉強ができたB子は特進クラス、私は落ちこぼれクラス。母にとっては屈辱だったみたいだけど、私はB子と離れられることがうれしかった。学力の差があったので高校も別だし、私のほうがバカなぶんにはB子も満足だったみたいだし、喜んで負けました。学力の差が開くにつれて母親同士も以前ほど親密じゃなくなり、土日に遊ぶこともなくなっていき、今では交流してないんじゃないかな」
翔子さんは“同質”ではなくなったことで、いじめから逃れることができた。しかし逃れられずに自殺を選んでしまった被害者もいる。
中学2年生の里美さん(享年14・仮名)は、3学期のテストの成績が上がったことから仲よしグループの女子生徒にカンニングを疑われ、そこからいじめが始まった。
「親は異変に気づいて教師に相談したんですが、教師は“仲よしグループに介入するとよけいに複雑になる”と言い何も指導しませんでした」(渋井さん)
終業式の日、里美さんは橋から飛び降り自殺した。里美さんの机の中には女子生徒らにいじめられていたことを記すメモが残されていたという。
「仲よしグループこそ、トラブルが起きたときに教師からの事実確認が必要です。ケンカ両成敗は絶対にやってはいけません。所沢市の中2殺人事件だって、20回もつねったというのが事実なら本郷さんになぜなのかを聞かなければいけなかった」
と渋井さん。
同質いじめに気づいたらどうすればいいのか。
「被害者と加害者の思いを把握した上で当事者同士を離すこと。休ませてもいいから近づけさせないこと。ガス抜きは必ず必要です」(同)
Aくんと本郷さんが通っていた中学では、'17年、'18年と2年連続で自殺があった。生徒指導が適切に行われていれば、と悔やまれる。