ネコを可愛がっていた母親

 2つの仕事を掛け持ちし、昼夜、働きづめだった容疑者。朝から酒をあおる母親の姿に日ごろから鬱憤をためていたとしても、不思議ではない。

 さらに、事件が起きる数週間前、気になる出来事があったという。

「息子さん(拓也容疑者)とみられる男性が全裸の状態で、担架に乗せられて救急搬送されたんです。何が起きたのか、なぜ全裸だったのかはわかりません。それと、息子さんが戻ってきてから、アパートの部屋の前に監視カメラを設置するようになったのが妙に気になりました」(前出の男性住民)

 周辺住民らによると、地域で空き巣などの被害が発生していたわけでもなく、何のために監視カメラを設置したのか、見当がつかないという。この住民に教えられ、母子宅前の監視カメラを確認してみると、現在はカバーで覆われてカメラレンズの向きはわからなかった。

 母子の生活ぶりはおぼろげながらつかめたものの、犯行の引き金になった親子間のいさかいは不明のまま。事件の全容解明は捜査の進展を待つほかない。

 もうひとつ気になることが……。再び前出の男性住民。

「母親はネコを可愛がっていたのか、よくネコがアパートの部屋に出入りしていました。フンをまき散らすので、はた迷惑でしたが」

 周囲との付き合いもほとんどなく、孤独を感じていたのだろうか。ネコと酒が母親の癒しになっていたのかもしれない。

 事件後、ネコたちは姿を消した。息子が母親を殺害したとわかるはずもないが、その部屋には誰もいないことだけはわかったようだった。