私たちの故郷を守りたい
「沖縄の砂浜の色ってわかります? 本当は白じゃない。(黒っぽい)この色なんです」
瀬嵩在住の東恩納(ひがしおんな)ちえ子さん(46)がそう教えてくれた。開発が進む沖縄では埋め立てて造られた人工ビーチが増えている。瀬嵩のような天然の砂浜は、いまや希少だ。
愛知県出身の東恩納さんが初めて沖縄を訪れたのは'06年のこと。基地問題に関心があり「ドキュメンタリーを撮りたくて」辺野古へ。来て間もないころは「基地のフェンスの方向ばかりをにらんでいた」と振り返る。
視点が変わったのは、のちに夫となる琢磨さん(58)や周囲の人たちと船に乗ったり、カヤック(カヌー)をしたりと連れ出されるようになってから。
「浜の入り口に防風林があって、天然の砂浜があって、生活に近いところに沖縄の昔の風景がまだ残っている。そんな場所に米軍基地があるんだと知りました。沖縄の人たちが辺野古に反対する理由はイデオロギーとかではなく、故郷を守るため、島の暮らしや文化を守るためなんだと、やっとわかった」(東恩納さん)
昨年12月に始まった埋め立て工事の影響は、すでに出始めている。
「もずくが採れていたのに、採れなくなっている。海がフロート(浮具)で仕切られ、潮の流れが滞留して水の透明度も下がっているし、流木が邪魔で泳げなくなったりしています。工事が進めば、ここのよさがすべてなくなってしまう。住むこともできなくなってしまうんじゃないか」
8歳の長男が通う小学校は大浦湾を挟んで、キャンプ・シュワブの延長線上にある。辺野古に新基地が完成したら子どもたちの頭上を米軍機が飛ぶことになるだろう。
「2年前にオスプレイが(名護市沿岸の海に)墜落したけれど、まだ基地はできていないのに事故が相次いでいる。それを知らず、辺野古に来たこともないという人たちが県民の中でも少なくない」
まずは現状を伝えたい。東恩納さんは、大浦湾の生き物の写真展を有志で開いたり、子育て世代と大学生が基地問題について意見交換するイベントを行ったりしてきた。
「声を上げる人がいることで初めて“基地は嫌と言っていいんだ”という雰囲気が作られる。座り込みをする人たちの高齢化が進む中、若い人にどう伝えていくかは課題です」