不発に終わったかに見える加藤の乱。
世間と芸能界に、どんな影響を与えたのか?

 こういった姿勢から、芸能界では加藤さんを慕う声は多い。今回の騒動で援護射撃が多数見られた点からもあきらかで、その点は加藤さんの美点でもあるとか。

「『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)でも香取慎吾さんとお互い信頼し合う関係であることが明かされたほか、7月25日のラジオ番組『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)では、矢作兼さんが“いま疲れているだろうな。徒党を組むのが好きじゃないから”“一匹狂犬だから。吉本は向いてない!って言ってるの”と加藤さんを気遣っていました。

 また南海キャンディーズの山里亮太さんが24日深夜放送の『山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)で、“加藤さんの言葉ですよ。本当に覚悟を決めた人間の言葉。あれすごいね。もう、ビンビン届いちゃってさ。これはすごいなって。俺は何もできないから、すげーな、加藤さんって。この声はちゃんと(会社に)届くかなって思った”と、加藤さんへの思いを口にしました」

(左から)矢作兼、山里亮太
(左から)矢作兼、山里亮太
【写真】加藤浩次を慕う矢作兼と山里亮太

 さらに、自身の進退に言及した24日放送の『スッキリ』の平均視聴率は10・8%を記録。狂犬ぶりを発揮しても、しっかり数字という結果につなげる姿は『めちゃイケ』時代から変わっておらず、プロらしい姿勢からもすごさが感じられるという。とはいえ、これら加藤さんの言動は、“騒がれた”こと以外に何か影響を与えたのだろうか。

「現状ではメディアや芸能界に強いインパクトを与えたとはいえず、消費される一過性の話題になってしまったように見えます。メディアや芸能界の文化はそれほどヤワではなく、人々の興味も残酷なまでに儚(はかな)いもの。しかし総合的に見れば、メディアや芸能界が変わる一助にはなったかもしれません。

 加藤さんの言動がよくも悪くも注目されたため、ユーザー側から『そもそもこの件は反社会組織とのつながりが問題』『テーマが反社会から芸能界の圧力問題にすりかわっている』などの批判が相次いだことで、メディアと人々との間で“乖離(かいり)”があることが浮き彫りになりました。今後は冷静な報道が増えるのではないでしょうか」

 また芸能界にも与えた影響は大きそうで、芸能事務所が最も強いという日本独自の特殊な体制が変化するひとつの布石となった可能性があるともいう。

「加藤さんのトーンダウンにより鎮火したようにも見えますが、現状に不満を持つ(立場の弱い)芸能人の心に、『これではいけない』という“種火”を根づかせられたはず。くすぶる炎がいつか大きな炎となって燃え上がる未来はないとはいえないでしょう」

 一見すると腰くだけにも見える加藤さんの言動だが、筋も通っているし与えた影響は小さくない。一挙手一投足が注目を集める“狂犬”の動向を見守りたい。


<今回のセキララアナリスト>
衣輪晋一さん
メディア研究家・コラムニスト・コピーライター。サブカルライターを経てインドネシアでボランティア。帰国後は文芸批評と民俗学の「フィールドワーク」をメディア研究に取り入れエンタメ記事を作成。『TVガイド』などの雑誌、新聞、Web、ドラマ公式HPなどで執筆。Twitter(https://twitter.com/shinichikinuwa

<文/雛菊あんじ>