“闇営業報道”をきっかけに行われた宮迫博之・田村亮の“暴露会見”、それを受けて吉本社長が“グダグダ会見”を披露したかと思えば、義憤にかられた極楽とんぼの加藤浩次が『スッキリ』(日本テレビ系)で「吉本の体制が変わらなければ辞める」と吠えた“加藤の乱”など、“吉本お家騒動”が世間を賑わせ続けている。
この2か月ほど、ワイドショー番組もお祭り騒ぎだとばかりに連日こぞって報道をしている。
それにしても、今回ほど、ワイドショーが動きやすかった騒動はなかったのではないだろうか。
SNSを引用するだけで
『FRIDAY』に端を発した“闇営業報道”のときは宮迫・田村らが詐欺グループのパーティーに出席している写真や、ネタや歌を披露する動画までテレビで連日、大写しで流していたのも記憶に新しい。それが実はテレビ局が雑誌社から使用料を払って借りたものであることを知っている視聴者はどれくらいいるだろうか。
テレビの場合は当たり前だが、映像が重要視される。撮影に出向いたり、証拠写真・映像を独自で見つけだすとなると労力も必要だし、費用もかさむ。写真や動画を借りてすむならこれほどラクなことはない。
数万円程度で誌面や写真、動画などを借用し、それを放送するというやりとりは昔からあった。
しかし、今回の吉本の騒動ほど雑誌社の素材や会見の様子を何度も流すだけで“番組が成り立っている感”が強いのも珍しい。
さらに今回は多くの芸能人がこの件について持論をSNSで発信した点も、ワイドショースタッフを喜ばせた一因である。
多くの吉本芸人たちが会社に対する擁護や非難の声を数多くつぶやいた。何度でも彼らのコメントを簡単に引用できる。おかげで、この件についてコメントしてくれる著名人をわざわざ探す手間も省けた。
擁護派と非難派の両方の声を紹介し、吉本芸人内の対立構造を示すことによって視聴者を惹きつけることができる。
取材に時間をかけず、極端なことを言ってしまえば、デスク作業だけでワイドショーに求められている“俗っぽさ”を十分に演出できてしまうというわけだ。実にお手軽な話だ。
しかし、かつてはワイドショーも自らスクープを追いかけ報道していた時代があった──。
突撃芸能レポーターがカメラマンを引き連れ、芸能人を直撃し、その生々しい映像に、視聴者はテレビに釘づけになったものだ。ここ10年ほどはそのような光景はほとんどというか、まったく見られなくなった。
「テレビも経費削減の煽(あお)りを受け、わざわざ出演料やロケ費のかかる芸能レポーターを使うことはなくなりましたね。
しかし、報道と違い、ワイドショーなどの“情報系番組”では、しっかりと取材できる記者が少ない。よって、ディレクターがそのかわりをすることになるのですが、彼らは週刊誌記者のように取材を専門としているわけでないですからね……」(元ワイドショースタッフ)
“吉本お家騒動”を「できるだけ引っ張ってほしい」と願う者もいるということだろうか。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌などで取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。