どこか他人事のような、被告の実父

 野田市内の勇一郎被告の実家は、いたるところに大きな蜘蛛の巣が張り、庭の雑草は大人の腰ぐらいまでの高さに伸び、まるで空き家のよう。

「栗原さんちの家族は、事件が発覚した翌日には、どこかへ行ってしまった」

 そう話す近隣住民は、勇一郎被告の実父が、荷物を取りに1週間に1度、時間にして30分程度、自宅に戻っていることを明かし、

「最後に話したのは、なぎささんの初公判の1週間前くらいでした。“ご迷惑をおかけしました。これから本格的な裁判も始まりますので”と言っていました。息子さんが虐待していたことについては“知らなかった”と話し、さらに今回の事件については“夫婦間の問題なので”と、どこか他人事でした。“今はどちらに?”って聞いたんですけどね、“言えない”って。“マスコミに答えると違う方向に話をもっていってしまうので、答えないようにしている”と言っていました」

 一連の事件の過程で、心愛さんのアンケートの秘密を漏らすという大きなミスを犯した野田市教育委員会は、

「今年度は、アンケートの前に個人面談をして、アンケートに書いてくれた気持ちをちゃんと受け止めるからね、と事件の謝罪をしながら担任を通して話をしています。野田市全部の小中学校で、そうやっています。

 心愛さんが在籍していた山崎小、二ツ塚小では、4月にPTA総会、6月にアンケート調査を行うにあたり臨時の保護者会を開き、学校は丁寧な対応をしていくということを伝えました」

 と変化を強調する。

 事件後、担任の計らいで教室に残されていた心愛さんの机は、もう置かれていない。

「心愛さん自身のことを忘れないように、という取り組みについては具体的には何もしていません」

 と前出・教育委員会は話すが、再発防止のためにも、この先ずっと、心愛さんの悲劇を忘れない取り組みが重要だ。