築45年でも室内は新築同然
UR賃貸住宅のホームページで調べてみると、現在、東京都内にURの物件(建物)は318ある。新築タワーから築45年以上の団地までいろいろだ。
最近のURは部屋のリノベーションがされているので、建物の外観とは違い、住戸内はきれいだ。また、築年数の古いURは家賃も安いので意外と穴場だ。
例えば、古くて大規模で有名な板橋区の「高島平」のURだが、わたしが調べたときは2DK・約50平方メートル、管理費込みで8万円前後。小さい部屋なら5万円台もあった。地区や新築かなどの条件により家賃は違うので、自分の予算を決めて調べるといいだろう。
また、23区内から東京都市部まで広げてみると、家賃は安くなる。また、また、もう少し広げて千葉、埼玉、神奈川も検討する価値はあるだろう。
わたしが借りた部屋は、築45年はたっている古い団地だが、室内はリノベーションされて新築同然だ。エアコンも備えつけだ。家賃は2DK・45平方メートル、管理費込みで8万円ほど、しかも駅近だ。
知り合いの単身男性に、自分で設計した持ち家を30代で手放し、UR暮らしを続けている人がいる。彼は、家賃さえ払えばいいので気楽だと語る。彼の部屋を訪れた人は、建具や設備の豪華さに「ここが公団?」と驚くということだ。
人は年齢とともに考え方が変わる。持ち家だからといって一生住むかはわからない。『女が家を買うとき』で作家デビューしたわたしが、持ち家派から賃貸派に変わったと知ったら、読者の方は驚くに違いないが、いちばん驚いているのは、このわたしだ。
わたしの場合、まだ高齢の母が生きているので、実家とURを行ったり来たりの生活だが、母にその日が来たら、マンションの理事会も町内会の番も回ってこない、めんどくさいことが一切なく、死ぬまで安心して住めるURに完全に引っ越すと、今は決めている。
その先のことはわからない。今は田舎に住む気はさらさらないが、仲間と一緒に移住するかもしれないし……それも楽しみだ。
<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『老後ひとりぼっち』、『長生き地獄』(以上、SBクリエイティブ)、『母の老い方観察記録』(海竜社)など。最新刊は『孤独こそ最高の老後』(SBクリエイティブ)。