バーチャル世界だからこその距離感
いちから株式会社が運営する「にじさんじ」。iPhoneXの顔認証機能で2Dアバターを動かし、動画配信を行うグループだ。「にじさんじ」では、配信メインで活動する場合は「バーチャライバー」と呼んでいる。二次元アニメキャラクター風の存在が、配信を通じて視聴者とやりとりできる、という生々しい距離の近さがバーチャライバーの人気の理由だ。
「にじさんじ」には80人近くのVTuberが在籍していて男性も多い。中でも人気のあるのは、剣持刀也という男子高校生。スラリとした背格好のまじめそうなイケメン……と見せかけてツッコミが鋭く、時折、口が悪いのが特徴。冷静なトーク力、テンポよく盛り上げるツッコミ技術、みんなの中心に立って整理する司会力、そしてVTuber界隈への深い愛情をもった発言で、次第に男女問わず熱烈な支持を受けるようになった。
ファンの言葉に向き合い、全力でぶつかってくれる彼の姿は、バーチャル「クラスの男友達」といったところだろう。
昨年は男性VTuber全般に光が当たりきっていない時期だったこともあり、どんなにハイクオリティーのMVを作っても、彼らはいま一歩話題にならなかったが「バーチャル紅白歌合戦」に出演し、たくさんの人の目にMVが触れてから人気VTuberの仲間入りを果たした。
男性VTuberはまだ、活動し続けることが厳しい土壌の上にあるが、信念を持って活動し続ければメジャーデビューも夢ではないという好例を示したのは彼らだろう。そんな男性VTuberの情報は、「2D☆STAR Virtual」でも特集されていて、にじさんじから21人とMZMのインタビューが掲載されている。
VTuberは、タレントである以前に「バーチャルな命」。キャラクターではなく、ひとりの存在として自己表現している姿に、男女を問わず視聴者は惹かれていくのだろう。トークや音楽などを、あえてバーチャルな世界でするのは、そのほうが自らの理想に近く、得られるものがあるからだ。
少年、少女、おじさん、吸血鬼、犬……常識にとらわれず、想像もできないような姿形で自らを表現するVTuberから目が離せない。