一見、芸人のためにみえる「項目6」

「ちゃんとした契約をすると発表したけど、確認書はウヤムヤにしようとしているのかなと思っています。それか、ただ単にまだ順番がきていないだけかもしれませんが」

 こちらの中堅芸人は、“表営業”にもかかわらずギャラが吉本から支払われなかったり、未払いを追及すると“あれ、ノーギャラやで”と後出しされた過去を持つ。彼に確認書を見てもらうと、

「1〜5の項目に関しては、大したことは書いてないなって思うし、まぁそこならサインしてもいいのかなと思いました」

 問題がないわけではない。

「気になるのは6の項目ですね。今までろくにマネージメントなんてしてないくせに、よく言えるなと感心しちゃいますよ。“タレントの諸権利を管理・保護・行使します”とあって一見、芸人のために言っている感じがしますが、著作権などが絡む案件のギャラの割合が不明だし、会社に管理される期間などが明記されていないので、都合のいいように解釈されそうで不安ですね

 7つ目の項目には、《本共同確認書に反する社員らの言動が判明した場合、それによるあらゆる責任を負担するものとします》とある。

そう書くなら、今まで未払いになっているギャラをちゃんと払っていただきたい。そしてパワハラや辞める際に圧力をかけていることを認めたほうがいい」

 さらに吉本所属の別の芸人も不満を続ける。

「トラブルについて、現場レベルで対応できるようにするってあるけど、めちゃくちゃ若い頼りない人しか現場によこさないのに、誰が対応するんだろうって感じ。いまと同じく“上に確認します”って言って、だいぶ時間がかかるのが目に見えてる」

 今回の騒動は、営業先が反社会的勢力だったことが発端だったが……。

「“営業先を適切に決定”って、芸人は約6000人いるけど、誰が確認するんだろう。たぶん変わらない。売れてる上の人たちの営業はちゃんと見るのかもしれないけど

 経営アドバイザリー委員会の次回開催と、共同確認書の配布について吉本に話を聞くと、「8月19日にも経営アドバイザリー委員会を開催しました。共同確認書は全員に配布・署名を完了させるため、鋭意作業中」とのことだった。

 今回、週刊女性に声を上げた芸人たちは、騒動の中心にいる芸人に比べ売れていないため、その逆恨みのように思えるかもしれない。実際、大御所芸人には、「嫌ならやめろ」「嫌なら売れろ」という者も少なくない。しかし、6000人という芸人を抱え、今後も抱え続けると宣言したのはほかならぬ吉本であり、そのなかで未払いなどが生まれているのも事実だ。共同確認書は、以下の言葉で締められていた。

《“よしもと”のタレントたちがこれからも「笑い」の力で世の中を明るくし、世間から永く愛されながら活躍していけるよう、一丸となってタレントの芸能活動に支障が生じるようなトラブルの防止及びその解決に全力を尽くします》

 全芸人が笑える日はいつになるだろうか……。