8月12日、俳優の宇梶剛士(57)が主宰する劇団による東京公演の千秋楽が、都内の劇場で行われた。
「今作は、北海道のアイヌ民族を描いた人情劇。宇梶さんは朝ドラの『なつぞら』などの撮影の合間を縫って、脚本を執筆。演出も務めています」(舞台関係者)
宇梶がアイヌにこだわる理由は、
「母親がアイヌ民族の末裔(まつえい)で、家庭を顧みず、アイヌの権利運動や反戦運動に没頭。サラリーマンの父親は単身赴任。家族がバラバラになり、宇梶少年は“捨てられた”と思い込み、グレていった。暴走族の総長として有名にもなった宇梶さんですが、不良になったきっかけは母親との関係が遠因でもあるようです。
母親とはその後、和解してテレビで共演もしました。役者で成功した宇梶さんは、アイヌの芝居を書き始めるようになり、アイヌ民族の役をもらうようにもなった。かつて憎んだ母のことは大人になるにつれ、彼の中で大きくなっているように感じられますね」(テレビ誌記者)
同じ北海道出身の“縁”
今回の舞台には有名人も訪れていた。
「千秋楽には歌手の大黒摩季さんが見えていました」(芸能プロ関係者)
今作は劇団発足以来の最高動員数を記録し、劇団恒例の打ち上げも大盛況。大黒は打ち上げにも参加したという。
「アイヌ民族の微妙な差別問題にも触れる作品ゆえ、お酒の席でしたが、まじめに舞台の感想を宇梶さんと話し合っていました。お互い北海道出身として考えさせられる表現が多かったそうです」(打ち上げの参加者)
北の大地が結んだ縁である。
「大黒さんは、北海道の札幌にある老舗パン製造会社の娘。'17年に公開した北海道のご当地映画では主題歌を書き下ろすなど、地元の地域貢献に力を入れています」(地方紙記者)
そんな大黒に宇梶との関係について質問してみると、本人がコメントを寄せてくれた。
「宇梶さんが'10年に出演していた『仮面ライダーオーズ』の主題歌を私が担当したことが縁で、知り合いました。また、原田芳雄さんの息子さんであるバンドマンが主催したパーティーでもお会いして、“ぜひ舞台を見に来てね”と言われるようになり、今回も誘っていただきました」
舞台を見た感想について、
「アイヌの人々もクオーター世代になったりしていますが、アイヌ文化を広めようとしている人もいます。私の場合は、典型的なアイヌらしいおじさんが父の知り合いで、ひざの上で可愛がってもらったりして、常に身近な存在でした。あのときのおじさんのおおらかさ、包容力、力強さとか、私もアイヌ文化に大変興味があったので、宇梶さんがそこに着目して深く掘り下げた演劇だと聞いて、絶対に見たいと思い、スケジュール調整をして行きました」
宇梶の自分探しの旅には、これからも多くの縁が待っていそうだ。