母親の答弁は弁護士のストーリーか
公判で母親である優里被告は憔悴しきったか細い声で検察の起訴内容を認めたうえで、
「夫の報復が怖くて、警察に通報できなかった」
と夫のDV(家庭内暴力)をにおわせる理由を述べている。
裁判を傍聴していた虐待事件に詳しいルポライターの杉山春さんは、
「子どもを亡くしてしまうような状態のときは、どの事件でも親たちのメンタルヘルスは最悪です。さらに母親はさまざまな理由でもともと自己肯定感が低いと思われます。
今回、夫に“叱ってくれて、ありがとう”などと感謝の気持ちを表明している。DVの持つ病理性、夫の妻へのコントロールの強さが、法廷では明らかにされると感じます。
強度のDVだと感じますが、司法が今後、彼女の加害性と被害性をどのように判断するのか、そこに最も大きな関心を持っています」
児相で児童心理司として長年勤務した心理学者の山脇由貴子さんは、
「優里被告は弁護士が作ったストーリーに乗って、みずからの罪を軽減しようとしている印象を受けます。
本当は夫がいくら怖くても、母親として子どもをその状況から逃がすか、自分が連れて逃げるかしなければいけなかった。子どもの命に関わることですから」
この種の事件にはいつも既視感がある。なぜ、いつも同じような環境の人たちが起こし、同じようなミスが起こり、同じような報道がされるのか──。
特に虐待に関しては、夫が主、妻が従の関係が多い印象がある。
「とりわけ、妻の連れ子のケースが多いですね。夫のほうが肉体的に強いし、妻には子どもの面倒をみてもらいたいという弱みがあるからだと思います」(山脇さん)