社会的孤立がより深刻なのは
高齢者よりも現役世代

 孤独死現場を長年取材していると、孤独死する人は何らかの「躓(つまず)き」を抱えていると感じることが多い。

 働き盛りである40代の孤独死の事例は、それぞれ属性も性別も全く異なるものの、一度社会からドロップアウトすると、周囲の人間関係から孤立し、そこから這い上がるのはかなりの困難であるという日本の歪(いびつ)な社会構造が見えてくる。それは孤独死という最終形態となって浮かび上がってくる。

 特に30代、40代の孤独死は高齢者と違って、発見されづらく、遺体も深刻な状態になっていることが多い。働いているから安全というわけでもなく、ふとした人生の躓きは、誰の身にもでも起こりえるのだ。

 先ほどのニッセイ基礎研究所の研究結果によると、社会的孤立がより深刻なのは高齢者よりも、ゆとり世代や団塊ジュニアなどの現役世代だ。

 孤独死の前段階ともいえる孤独や孤立は、他国でも大きな社会問題となっており、イギリスでは、2018年に孤独担当大臣を設置するなどして国家ぐるみの対策を行うことで、めざましい効果を上げているという。日本でも、国が孤独死の実態をまずは把握し、手当てをするところから始めてほしいと思う。


<プロフィール>
菅野久美子(かんの・くみこ)
1982年、宮崎県生まれ。ノンフィクション・ライター。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)などがある。最新刊は『超孤独死社会 特殊清掃現場をたどる』(毎日新聞出版)。また、さまざまなウェブ媒体で、孤独死や男女の性にまつわる多数の記事を執筆している。