食べることに罪悪感があった
元新体操選手で、シドニー五輪で団体5位、アテネ五輪で個人総合18位だった村田由香里さん(37)は、18歳から24歳まで6年もの間、無月経だったと告白する。
「新体操は見た目の心象で採点される競技なので、監督やコーチから口酸っぱく“細いほうが美しい。やせたほうがいい”と言われます。ですから、食べることに罪悪感があって、だんだん食べなくなっていった」
村田さんは164センチと長身だが、当初49キロあった体重は、みるみるうちに43キロまで落ちていったそうだ。
「代表の合宿などは、1日に10時間も練習するんですが、そのときは貧血ぎみで、いつもふらふらでやっていました。練習が終わって、部屋まで歩くのもやっとの状態。
休みの日は外に出かけることもなく、ずっと部屋で横になっていました。私は無頓着なほうだったので、気分的にはイライラせず、目標に向かって進んでいるという充足感がありましたね」
2回目の五輪のときには、47キロが最も動ける体重だとわかったが、
「体重や食事、それから月経のことは、代表の合宿でも、大学の同僚にも、ほとんど話しませんでした。個人差があることで、私はわりと減量で苦労しなかったほうなので、そうではない選手に気を遣うというか、タブーというか……」
現に今回、週刊女性はほかの元アスリートにも話を聞こうとしたが「デリケートな問題なので……」と取材拒否。答えにくいテーマのようだ。
無月経には不妊の可能性も
先の能瀬医師は、
「月経がなくなるのは、運動量に見合った食事がとれず、エネルギー不足に陥るので、身体が異変を感じて危険信号を出しているのです」
とアスリートに限らず、食事制限をしている一般の女性も、無月経には注意が必要と警鐘を鳴らす。
「後遺症として、骨がすかすかになる骨粗鬆症になってしまい、疲労骨折や引退後の骨折のリスクを高めるおそれがあります。
また近年、競技を続けながら妊娠を目指す選手も増えつつありますが、そのような選手が無月経だった場合、不妊の可能性もあります」
これまで指導者も、選手自身もエネルギー不足や無月経への認識が低かったことを能瀬医師は指摘する。
「選手は月経がくると、練習を休んだり、軽くしたりしなければいけないので、“こないほうがいい”と考えている選手が意外に多いのです」
中学・高校生の場合は、病院での受診すらためらってしまうこともあるという。周りに未成年での妊娠を疑われるからだ。