逆転夫婦ならではの仲直り方法

 一緒に過ごせばケンカをすることもあった。ジョンさんは自らを「酒乱系」と言い、以前は、物にあたって、電気ポットを投げ、ガラス窓を割ったことも。

「普通の男女はケンカの後に肉体関係で戻ることがありますが、私たちはそれがない。そうすると、笑ったら仲直りということになるんだけど、私はなかなか笑えないんですよ。ケンカのあとに急に笑えって言われても無理でしょう。そうするとマキちゃんが笑わせにかかるんですよ」(ジョンさん)

「笑わせる芸当をいくつか持っているのよ」(マキさん)

 独自のスタイルで円満な生活を送っているようだ。

「テレビとは違って本当の私たちはとっても仲がよいんです。ケンカもなく“ただいま”と“おかえり”を大切に日々を穏やかに過ごしています」(マキさん)

 ドキュメンタリーでは激しい言い争いが話題になっていた。しかし、素のふたりを取材すると、夫婦漫才の掛け合いのような心地よい時間が流れていた。

(取材・文/渋井哲也)


マキさん
本名:宮本昌樹。茨城県生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業(文学士)。大学在学中から六本木のゲイクラブ「プティ・シャトー」で活躍。卒業と同時にフリーになり、観光にグルメ、ラブハントを兼ねて全国を行脚。その後、レストランクラブの経営や進学塾の講師、OLなどさまざまな職を経験。現在はステージを中心に活躍中。

ジョンさん
本名:宮本佳枝。群馬県生まれ。プリンスホテルに就職したのち、東京・六本木のレズビアンクラブで修業。故郷の前橋へ戻りミックスバー「パブハウス・ジョン」を開店。地元では美少年でお料理の上手なマスターとして有名だった。閉店後は伊香保温泉などに勤務、マキさんと友情婚をする。現在は介護福祉士として活躍中。

HP「ジョン&マキ倶楽部」:http://www5e.biglobe.ne.jp/~johnmaki/

取材・文/渋井哲也
ジャーナリスト。長野日報を経てフリーに。自殺や生きづらさを中心に取材を続ける。『平成ネット犯罪』(ちくま新書)ほか著書多数