「お母さんは3年ほど前、自治会の理事で会計を務めていまして、実にしっかりとした方だったのに……」

 と容疑者と同じマンションの男性は肩を落とす。

 事件は10月6日、日曜日の朝、埼玉県朝霞市の閑寂な住宅街にあるマンションで起きた。

 午前9時15分ごろ同県警朝霞署に、「娘を殺してしまった」と110番通報があった。通報したのは、マンションに住む無職の勝間田妙子容疑者(72)本人からだ。

笑顔を見たことがない

 大手新聞社の社会部記者が次のように説明する。

「捜査員が駆けつけると、マンションの室内で容疑者の娘で長女の智子さん(48)が仰向けに倒れているのを発見。容疑者はひも状のもので首を絞めて殺害したようです。智子さんは母親より若くて身体も大きいので、おそらくは寝ていたところを襲われたんだと思いますけどね」

事件現場で捜査をする捜査員
事件現場で捜査をする捜査員

 殺人の疑いで逮捕された容疑者は容疑を認め、殺害の動機について、

「私が娘よりも先に死ぬので、娘をひとりにさせられないと思った」

 と供述している。

 別のマンションの住人はこう証言する。

「年齢は報道で知ったんですが、それよりずっと若く見えましたね。すらりと身長が高くて、ほっそりした方でしたけれども、確か未婚だったと思いますよ。毎朝8時半ころに駅のほうに歩いて行くので、お勤めされていたんだと思いますけど」

「ただ」と言いよどんで、住人は続ける。

「ちょっと見ただけではわからないですが、ずっとうつむいたままで歩いているんです。笑った顔も一度も見たことないし、マンションでほかの住人と会話している姿も一度も見かけたことがないんです。内向的というか、うつのような雰囲気もありました」

 今年になって1度だけ、周辺で犬を散歩させている姿を見かけたことがあり「ああ、こういうこともするんだ」と思ったという。

 マンションの別の住人は、

「未婚ということと、そうした病気を不憫だと案じての犯行だったのかもしれませんね。とはいっても、お母さん自身がまだ若いのですから、それほど将来のことを案じなくてもと思いますけどね」

 と語る。