振り付けに新しい挑戦
結果的には優勝することができたが、内容は本人が満足できるものではなかった。しかし、フィギュアスケート解説者の佐野稔さんは、いまはシーズン序盤のため大きな懸念はないと語る。
「チャレンジャーシリーズは10月19日から始まるグランプリシリーズの前哨戦だけに、結果的にはまずまずだったのではないかと思います。本人としては4回転トゥループで転倒してしまったことが心残りだったと思いますが、4回転フリップは、非常にきれいに跳べていましたからね」
まだ完全な滑りではないがコンディションはいい状態にあるという。スポーツライターの折山淑美さんも、現時点での体調のよさに着目する。
「宇野選手の動きには、キレがあり、身体のコンディションは非常にいい状態にあると思います。ここから技と技のつなぎの部分など、細かい部分をもっと練習すれば、さらによくなると思いますね。樋口美穂子コーチが振り付けを担当していたころは、早い段階ですべて仕上げていましたが、今年はこれから構成をどんどんバージョンアップしていくと見ています」
今シーズン、宇野は曲の振り付けに関しても新しい挑戦を果たした。ショートプログラムはシェイリーン・ボーン氏が、フリーはデービッド・ウィルソン氏が担当。
「シェイリーンさんは羽生結弦選手や高橋大輔選手などの振り付けも担当したことがありますし、デービッドさんも担当する選手の個性を引き出す振り付けが非常に得意です。宇野選手は、しなやかな動きというより、ひとつひとつの動きが力強く、しっかりとメリハリがあるタイプ。そういった彼の個性もわかったうえで、振り付けをしている印象があります」(折山さん)
新しい挑戦の数々は、彼に明確な“覚悟”を芽生えさせているようだ。
「宇野選手はとにかく新しいことに挑戦して、視野を広げていきたいという思いが強い。振り付けもこれまでにない、新しい要素を取り入れたかったのでしょう。“古巣に安住したらいけない”という思いがあったのだろうと思います」(折山さん)