だが、ある一件で彼の心は折れてしまう。

映画配給会社の関係者に“もし組合を作るなら、今後うちの作品には小栗さんの事務所に所属する俳優をキャスティングできなくなる”と言われたようです

 さらに決定的だったのが、俳優仲間たちの反応だった。

組合に誘っていた仲よしの俳優たちが、小栗さんから離れていったり、誘っても組合に加わると言ってくれなかったりしたようです。俳優の権利を守ろうとすることで、日本の大手映画会社の作品に出演できなくなるかもしれないというリスク、そして出演者以外のスタッフは相変わらず疲弊していく制度にはついていけなかったのでしょう

“ゆくゆくは事務所を代表する存在に”

 そんな彼が今年7月、映画の都・ハリウッドへ旅立った。

「ハリウッドでは役作りのための調整期間もギャラが支払われるなど、俳優の権利がしっかりと守られています。契約によって、すべてがクリアになっているハリウッドという舞台で活躍したいと思ったのではないでしょうか」(前出・芸能プロ関係者)

 日本の映画界をあきらめて、アメリカを拠点に活動していくということなのか─。

英語の勉強をするため。それだけですよ

 そう話すのは、小栗の所属事務所の山本又一朗社長。小栗を中心に、大ヒットドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の田中圭など演技派の俳優が所属する芸能事務所の代表取締役だ。渡米の発端は、来年公開予定のハリウッド映画『ゴジラVSコング』のプロデューサーからのオファーだったという。

小栗がハリウッド進出を狙って、オーディションを受けたわけではないんです。向こうからのオファーがあまりにも熱烈だったので。ただ、彼も英語の勉強はしていましたが、ペラペラ話せるほどではなかった」(山本社長、以下同)

 昨年8月から2か月間、社長は小栗とともにアメリカに渡り、彼にある試練を課した。

この作品でいちばん長くて難しいセリフを言えるようになったら出演していいと言ったんです。すると、小栗はそれを難なくこなした。その結果を受けて、今年7月から渡米し、半年間かけて英語の猛特訓に励んでいます。外国の作品に出演するなら、セリフを言えるようになるだけではなくて、監督やスタッフとコミュニケーションをとれることが大前提ですから

 小栗の俳優組合という構想については、

俳優というものを逸脱するときは、それなりの覚悟が必要。演技にすべてを捧げていたとしても、今いるポジションを守れるかどうかわからないのが俳優の世界ですから。今の小栗にそんな時間はありません。英語を必死に覚えていますから(笑)

 夢破れた小栗には、次なる野望が頭に浮かんでいる。

「公開中の映画『人間失格』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を狙っているようです。今は10年スパンで映画を製作からパッケージまでやる計画を考えていて、そのために俳優としてのポジションも強固にしようとしているとか」(前出・映画関係者)

“ゆくゆくは事務所を代表する存在になってもらう”と断言した山本社長。

 小栗がゴジラのように、映画業界の慣習をぶっ壊す日は来るのだろうか─。