民事裁判で異例のコメント
裁判の争点は、顧問の行為が「指導」か「パワハラ」か。違法性があるか。自殺との因果関係があるのか、などだ。
生徒指導に関する法的な定めは明確にはない。だが、文科省の「生徒指導提要」では、複数の教職員でチームを編成し、生徒指導にあたるとしている。また「学校保健安全法」では、安全な教育環境を整えることが定められており、「自殺対策基本法」では自殺予防がうたわれている。
'19年4月、札幌地裁は、道側の事後対応の一部の違法性は認めたが、大輝くんへの指導に関わる点は、指導の必要性を認めた。自殺予防に関する点には触れなかった。
証人尋問では、生活指導部長も顧問も、トラブルのきっかけになった詳細なメールのやりとりを把握していなかったことが明らかになった。メールで使われる言葉や表現は部活内での人間関係、お互いの心理状態などで変わるが、判決では考慮されていない。
ただし、高木勝己裁判長は判決要旨を読み上げたあと、「自死に至った大輝くんの苦悩、愛する家族を失った原告やお姉さんなど遺族の悲しみは、裁判所としても、想像にあまりある。最後に、大輝くんのご冥福を祈り申し上げる」と述べた。民事裁判でこうしたコメントは異例だ。
美和さんは控訴を決めた。
「顧問の言動がなければ、大輝は今も一緒に過ごしていたという思いがある。一審では違法性がないという判決でしたが、これでは教師が暴言をしても許されてしまいます」
そして始まった9月13日の控訴審。美和さん側は、自殺した当日も顧問が大輝くんに指導していたとする匿名情報を提出した。もし自殺直前も指導されていれば、それが引き金となった可能性は高まるはずだ。また、新たな証拠として同級生の陳述書も提出。学校生活のなかで不適切な指導をされた経験や、アンケートに書いた内容が開示された内容と違う点を指摘した。
第1回の口頭弁論で美和さんは思いをぶつけた。
「指導が適切だったというのなら、息子の未来につながる働きかけが伝わるところを教えてください」
はたして控訴審で美和さんの訴えは認められるのか。