家庭訪問の直後に命が絶たれた理由
'15年11月4日17時40分ごろ。鹿児島県奄美大島市の中学1年、新山直人くん(13=仮名、以下同)は学校から帰宅した。弟と一緒にテレビを見ていると18時ごろ、担任が訪ねてきた。祖母が応対するが、家庭訪問の理由について説明はない。その後、祖母は担任と話す直人くんが泣いているのを見た。訪問は長くて20分。担任が帰ると、直人くんは号泣した。
心配になった祖母は母親に《早く帰ってきて。大変》とLINEのメッセージを送信。母親の結子さんが帰宅後、直人くんを探すが部屋には見当たらない。
客間のベランダで見つけた結子さんは「なんでそんなところに立っているの?」と声をかけた。近づくと、直人くんは首をつっていた。心臓マッサージをしたが、病院で死亡が確認された。
「朝、身長の話をしました。1年生が終わるころには、(私の身長を)抜いているかもね、と。それから、ハイタッチをして学校へ送り出したんです」(結子さん)
父親・繁さんは単身赴任中。親類から「大変なことが起きた。直人が自殺を図った」との電話があった。
「何を言っているんだろうと思ったんです。妻も電話で、どうしよう、どうしようと言うだけ。その声が耳について離れず、一睡もできませんでした」(繁さん)
翌日、家に戻り「何があった?」と聞くと、祖父が「先生が来ていた」と言い、祖母は「なんで先生が来たんだろう」と、遺族の間では家庭訪問を疑い始めた。
直人くんが亡くなった翌日から学校は基本調査を開始。すると担任が家庭訪問のとき、「嫌な思いをしている人もいるが、誰にでも失敗はあるので、改善できればいい」などと言っていたことがわかった。直人くんに、いじめの疑いがかけられていたのだ。
調査によると、事の発端は11月2日、同級生が欠席したことから始まる。同級生の母親が「友達に嫌がらせを受けているので学校に行きたくないと言っている」と、担任に電話で告げた。
4日に同級生は登校したが、担任が紙を渡し「されたことを書くように」と言った。その中に直人くんの名前もあったが、嫌がらせをした人物としてではなく、彼らと一緒にいたことが記されていた。嫌がらせをしたと名前があがった生徒に対し、担任は昼休みに指導する。一方、直人くんは同級生に給食を持って行き、一緒にサッカーをした。
担任は、放課後にも指導をするので直人くんも残るようにと言いつけ、自分がしたことを紙に書かせた。直人くんは「自慢話のとき、“だから何”と言った。話を最後まで真剣に聞けていなかった」とだけ書いている。また担任は「もし同級生が学校に来られなくなったら責任をとれるのか」とも迫った。直人くんは「なんで俺が呼ばれるのか?」と、ほかの生徒に不満を漏らしていたという。