技術の進化で妊娠率が大幅に向上
当初の体外受精では採取した卵子に濃縮洗浄した精子をかけて受精を待ったが、現在では顕微鏡で見ながら卵子内に細いガラス針で精子を入れて受精させる『顕微授精』が主流。この受精卵を培養器内で一定レベルまで育てて女性の子宮に戻す。
「最近では卵管内の環境により近い成分の受精卵培養液も登場しました。また、培養器は体内と同じ暗い状態にしていますが、かつては受精卵にストレスを与えてしまいかねない光や外気にさらして受精卵の状態を確認する必要がありました。これが現在は培養器に内蔵されたタイムラプスと呼ばれるビデオカメラで培養器の外から受精卵の状態を確認できるようになりました」
さらに現在では受精卵が子宮に着床する確率を高めるため、事前に受精卵の染色体異常を鑑別する着床前診断も登場した。しかし、この診断は男女産み分けなどにも応用できてしまう倫理的な問題があり、現時点では習慣性流産や重篤な遺伝性疾患になる可能性が高いケースに限って試験的に行われている。この技術で染色体異常のない受精卵を利用すると、女性の年齢にかかわらず妊娠率は60~70%と報告されている。
ただ、染色体異常のない良質な卵子を得るためには、前述のようにやはり女性の年齢が大きな壁になる。
「日本の問題は不妊治療を受けている人の多くが40歳前後であること。世界的に見ると不妊治療を受けている人の中で40代は10~20%台ですが、日本では40%超となっています」
結果、日本は人口当たりの不妊治療の周期(回数)は世界有数だが、妊娠率は世界最低レベル。やはり不妊治療では技術が進歩した今も年齢の壁が大きく立ちふさがっている。
このような状況の中、子どもを産むこと、育てることについて現在の日本社会における問題を考えていこう。
まずは、“2人目不妊”に焦点をあてる。