しかし、時代の流れにのまれて酒類販売だけでは商売が立ちゆかなくなり、クリーニングのチェーン店を兼ねたり、店先でたこ焼きなどを売った時期も。別の利用客は「言いにくいけれど、父親は酒臭い息をして軽トラで配達することがあり、それも客離れを加速させたと思う」と話す。
繰り返す万引き
一方、子どもたちは成績優秀だった。孝一容疑者は地元の小・中学校を経て県内で5本の指に入るような進学校に合格し、東大・京大に進むのも夢ではなかった。
「でも、お姉さんはもっと優秀だったんです。比較対象として評価されない孝一くんはおもしろくなかったのか、家庭内暴力をふるうようになり、引きこもってしまった。自宅から言い争う声や物を投げる音が聞こえてくるようになった」と近所の50代女性。
そんな孝一容疑者をかばったのは母親だった。唐突に「北海道の牧場で働く」と言い出しても、困った顔をしつつ受け止めた。知人によると、きつく叱ったり、突き放すことはなかったという。
「そのうち孝一くんは周辺宅の玄関前などにゴミを捨てるようになった。真夜中から早朝にかけ、スーパーのビニール袋に入れたゴミが複数の家に置かれているんです。複数のゴミ袋を持って歩いているところを目撃した人もいます」(同・女性)
ゴミは食べ残しのリンゴの芯やティッシュくず、使い古した歯ブラシ、缶詰の空き缶など。酒の銘柄が印字された段ボール箱で捨てることもあった。新築の家にはなぜか、ほぼ毎日ゴミが捨てられた。
脇が甘いのは、犯行の一部始終を住民らに目撃されていることだ。捨てる瞬間をキャッチし、身元を確認するため尾行した住民や、「警察に通報したことがある」と話す住民もいる。
若いころから万引きを繰り返していたとみられる。
「容疑者宅前を通ると、室内から“あんた、また盗んだでしょ!”“なんで万引きなんかするの!”などとお姉さんが罵倒する声がよく聞こえてきた。孝一容疑者は言われっぱなしではなく、あーだこーだと言い返していた。声が大きいんだよね」(近所の男性)
スーパーで万引きする瞬間を見た住民が、
「今日、あそこの家の人が万引きしていたよ」
と、自分の家族に報告するケースもあった。