こんなふうに医師が自分の訴えをじっくりと聴いてくれたら、どれほど救われるだろう。
「誰かに話すという行為だけで、たとえ問題そのものは解決しなくてもずいぶんとラクになるものです。うつ病になる人は、いい母やいい妻を頑張ろうとするあまり、〇〇しなくてはならない、〇〇できない自分はダメだと考えがち。
例えば、体調が悪いのに『夕飯を作らないと』と思い、できずにお惣菜を買うと『作れなかった』と自分を責める。そうではなく、『体調が悪いなか、お惣菜を買って夕飯を準備できてよかった』と、とらえることもできるわけです。ものごとのとらえ方をプラスに変えていくことが大切です」
うつ状態などの更年期の心身の不調には、こういった対応に加えて、ホルモン補充療法も効果がある。
「更年期は女性ホルモンであるエストロゲンが減少するせいで、さまざまな不調が現れるので、このホルモンを少し補ってあげるのです。ぜひ知ってほしい治療法です」
ホルモン補充療法とは?
女性ホルモンと言われるエストロゲンの低下をホルモン製剤によって補う治療法。「若いころと同じ水準にもどすのではなく少し補うだけで、症状は軽くなります」(甲村先生・以下同)
飲み薬のほか、貼り薬、塗り薬もあり、ライフスタイルに合わせて補充方法を選択できるのも魅力だ。
「効果がとても高いのに、日本ではあまり普及していないのは残念。乳がんの発生率が上がると言われていますが、ほんとにわずかな数字で、定期的に乳がんをチェックしていれば問題ない程度です」
婦人科をもっと活用しよう
月経不順や妊娠・出産分野が専門、というイメージがある産婦人科では、女性の心身の不調全般も診てくれる。就職や出産など人生の節目に、自分に合った産婦人科医を見つけて「かかりつけ医」としておくのはおすすめ。なんでも相談できるので心強い。「親子2代で通ってくれる患者さんも大勢います。家族関係や体質などの情報も把握でき、信頼関係も築きやすいですね」(甲村先生)
《識者PROFILE》
海老澤 尚先生 ◎六番町メンタルクリニック院長。精神科医。不安症、不眠症治療など、多岐にわたる診療経験があり、ひとりひとりの心の悩みに寄り添い職場での悩みやストレスにも理解が深い。
甲村弘子先生 ◎日本女性心身医学会理事。産婦人科医。メンタルを含めた女性の健康を一生を通じてサポートしてくれる心強い存在。こうむら女性クリニック院長。