日本の神話や古典、民話に登場する女の子と「時を超えたガールズトーク」を繰り広げるような新感覚のエッセイ『日本のヤバい女の子』で注目を浴びたはらだ有彩さん。

 乙姫、かぐや姫などと語り合った前作に続き、2作目の『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』では、八百屋お七や山姥との対話を通して現代にも通じる女性の生き辛さを描き出しています。

深く考えずにいい話にしてしまおう

 昔から古典に関心があったのでしょうか。

「いえいえ。古典を元から全然知ってるわけじゃなくて、古文の授業めっちゃ寝てたみたいな感じなんです。この本に出て来るエピソードも、凄く広い選択肢から選んでいるわけではなくて、問題意識の方から逆算して探しています

 例えば、『夫婦円満』と言うテーマの昔話は何かないかなって探し、表向きは夫婦円満って言ってるけど、実はどちらかが犠牲になっている話もあるし何かあるだろうと。

 現代の私には、何が書かれているか完全には分からないけれど、書いた人の何らかの問題意識があるはずだからそれを見に行こうとか

 最初の本で言うと、おかめと清姫には凄い思い入れがあります。今彼女らについて言われていることと、当時本当にあったことの隔たりが大きすぎて、それが気になるのかもしれません」

 日本一の宮大工と呼ばれる夫のミスを助言で救い、その後に夫の名誉を守るために自害した“おかめ”の伝説。現在では、おかめは夫婦円満、内助の功の象徴です。はらださんはそれに首をかしげます

どうしておかめが死ななければいけなかったのかなと。物凄く違和感を覚えるんです。その話が今ではいい話になっていることへの恐ろしさも感じます。おそらく深く考えずにいい話にしてしまう方がみんなにとって楽で気持ちいいんだろうなって

 おかめ伝説の舞台、京都の大法恩寺に行ったのですが、そこにはおかめの顔と男性器を合体させた玩具が展示されていて、それを見に来た高齢の男性が“こういう女が可愛いんだよ”とおかめのことを話しているんですね。おかめ伝説が夫婦円満とセックスみたいな分かりやすいことにされていて、何だかなと」