「実は平松容疑者というホームレスを知ったのは、被害者の小山さんを知ったことがきっかけで、つい最近のことでした。それがこんなことになるとは……」
そううなだれるのは、地域のホームレスを支援するボランティア関係者。彼らでさえ把握していなかった2人の事件が発覚したのは、11月24日のことだった。
競輪にハマって
現場は、城下町として栄えた神奈川県小田原市を流れる酒匂川が相模湾に注ぐ河口付近。その近くの橋の下で生活していた小山栄一さん(76)が遺体で発見されたのだ。
背中には包丁のようなもので刺した傷があり、警察は小山さんのテントの隣に住んでいた平松政男容疑者(43)を25日、死体遺棄の容疑で逮捕した─。
近年、格差社会が拡大し貧困層の増加により、ホームレスも増えていると言われている。
しかし、人口約19万人の小田原市が把握しているホームレスは今年1月の時点で16人。今回の2人は把握していなかったという。
「このマンションは築45年ほどだけど、小山さんは35年前から20年くらい母親と2人だけで住んでいました。気性が荒いところもあったけど、明るくていい人でね」
と話すのは、小山さんがテント暮らしをしていたところから100メートルほど離れたマンションの住人。
近所の知人などの話をまとめると、小山さんは東京出身で、小田原近隣の町にあるゴム工場に勤務。結婚して、2人の娘に恵まれたという。
「でも、競輪にハマってね。ここは小田原、平塚と競輪場があるから。それで消費者金融から借金までして、奥さんと娘さんたちは出ていったみたい。その後、このマンションに移って、母親と2人暮らし。それでも競輪をやめなくて、ウン千万円も借金。定年まで働いて退職金もあったけど、マンションを売って出ていくことに。本人は“でもさ、楽しみがなけりゃ、オレだって生きられないよ”って言ってたね。もう病気、依存症だよ」(近所の知人)