動き出した水道民営化
コンセッションはメディアなどで「民営化」「部分的な民営化」と報じられた。「完全民営化」、「業務委託」、「コンセッション」の違いは以下のとおり。
◎完全民営化……民間事業者が自由裁量で運営。最終責任は民間事業者にあり。 ※イギリスなどで実施
◎業務委託……民間事業者が自治体の指示による使用発注書に基づき運営。最終責任は自治体。 ※水道法改正前から可能
◎コンセッション……民間事業者が自由裁量で運営。最終責任は自治体。 ※水道法改正後から可能に
宮城県は、上水道と下水道、工業用水の3つの水道事業の施設を保有したまま、運営権だけを民間企業に売却する「コンセッション方式」の導入を目指していて、実現に向けた条例の改正案をまとめた。早期の導入を目指している。
コンセッションは契約と情報公開が要である。注意してほしい点は、コンセッションとは仕組みの大枠のことで、詳細は自治体と企業と個別契約による。水道事業のどの部分を企業がどう行うか、どちらがどのような責任を負うかなどを詳細に契約する。そして、契約がきちんと遂行されているか企業は情報公開、自治体はモニタリングを行う。
もとの契約に不備があったり、企業の情報公開が不十分だったり、自治体にモニタリング能力がないと、金の流れや業務の質が見えにくくなる。水道料金の上昇やサービス悪化を招きかねない。
さらに関連する問題として、自治体の技術・管理能力の継承がある。コンセッション導入から数年は能力のある職員がいて、企業の業務が適正かを監督できるし、災害時には現場で対応することもできる。
だが、コンセッション導入から一定の年月が経過すると水道事業に精通した職員は減っていき、コンセッション契約の終了時には、そうした職員の多数が退職する。そのため契約を更新せざるをえない状況になり、民間企業に有利な契約内容になる可能性もある。
つまり、契約終了後のビジョンをもつことがとても重要になる。海外でコンセッションした水道が再公営化した事例がある。その割合は少ないが、普通に考えれば、よほど自治体に資金と人材がなければ難しい。