物取りか、捜査難航
智子さんの遺体は、石段の麓から4分の3ほど上ったところで発見された。高台がある頂上の仏像周辺には、折れて血痕がついたほうきや智子さんが所持していたペットボトルが放置されていたことから、智子さんは1度、高台まで歩いてたどり着き、そこで犯人に襲われたとみられる。
高台から遺体発見現場までは約44メートル。犯人に応戦したが、ほうきが折れたため全速力で逃げ下り、さらに危害を加えられたとみられる。草むらにはその跡が残されていた。
智子さんが首にかけていた貴重品袋には、現金2877バーツ(約1万400円、1バーツ=約3・6円)が手つかずのまま。ところがパスポートとデジカメが入ったショルダーバッグはなくなっていた状況から、スコータイ県警は、物取りの可能性が高いとみて捜査を開始した。
犯人の有力情報提供者への懸賞金は200万バーツ(約720万円)まで引き上げられ、現場周辺の住民約200人からDNAサンプルの採取も行った。しかし、犯人の特定につながる有力情報は得られず、発生から6年後、捜査権限はスコータイ県警から法務省の特別捜査局(DSI)へ移行された。
重要事件を扱う中央政府の捜査機関が管轄することで、捜査への進展が期待されたが、思うようには進まなかった。そして発生から12年目を迎えた今年秋、事件は急展開した。