村江「ただ話を聞いてほしくて、1時間も2時間も居座るお客さんもいますしね。でも、そういったお客さんも買っていただけるかもしれないから無下にもできないし……」
真澄「そういうお客さまから逃げるために、会話を終わらせるクロージングをして、フェードアウトする、という研修も受けるんだけど、そのとおりにできない人もいますから。裏では“あ、あの人に捕まっちゃった”なんて言われるし。
そういった対応を続けていく中でお客さまが増長して、うまくフェードアウトしようとすると“あの人はちゃんと対応してくれるのに”とクレーマーになっちゃう。そういったお客さまをつくらない企業努力も必要かなと思いますね」
お客さんと販売員の関係が変わってきている
販売員の質も落ちているが、対するお客さん側にも変化がある、とふたり。その変わりようについて聞いてみると……。
真澄「最近、コンビニとかで店員が土下座させられている画像が流れたりするじゃないですか。販売員とか責任者に無茶ぶりして……。もしかしたら店側に非があったかもしれない。でも、あそこまでやったら犯罪者ですよ」
村江「あれは自分のほうが立場が上だと思っているからですよね。自分より弱いだろうと思う人を上から卑下して、自分を優位にしようとしているんでしょうね」
真澄「昔はあそこまでのことって、なかったじゃないですか。接客していて、欲しいものを相談されて、いろいろアドバイスをありがとう、じゃあこれを喜んでいただきます、ってお互いに“ありがとう”のはずだったのに」
村江「いつの間にか関係が変わってきてますよね。要望がエスカレートしてきて、それに応えようと努力をすると、もっとお願いしても大丈夫かな、って。お客さんと販売員の気持ちの、ボタンの掛け違いみたいな感じになっていますよね」
真澄「昔と比べて、情報拡散のスピードが段違いに早くなったこともありますよね。“あの店でこんなことをされた”ってネットに書き込まれたら、それがウソでも本当のことのように流れてしまいますし」
村江「それがお客さんの態度を大きくする原因のひとつであることは間違いないですね。お店側にとってはネットの拡散力は脅威ですよ」
真澄「クレームの中で『お客さまは神さま』だろう、なんて言葉が出るときがあるけど、この言葉はどう思います?」
村江「お客さまがちゃんとしたお客さまなら、という条件が満たされればそのとおりかなと思います」
真澄「それはどういうこと?」
村江「あなたは私に対して、ちゃんと利益をもたらしてくれる方ですか? 私を不幸にしませんか? って。利益をいただけるなら、私もできる限りのことをさせていただきますよ(笑)」
真澄「確かに(笑)。“買ってやるんだ”ではなく、“買わせていただきます”くらいの気持ちを持っていただければ、お互いに気持ちよく“ありがとうございました”で別れられますよね」