4つ目のカテゴリーは【うっかり・適当型】。今回の栃木の温泉旅館のケースもこれにあたるとみられる。
前出・石崎弁護士は、
「うっかり忘れていた場合は、請求するとすぐに料金を払いますが、適当型は最もひどい。しらばっくれて無視します」
とその厄介さに手を焼いたことが脳裏をかすめるという。
20代の女性Aさんから、2017年4月28日に予約が入った。5月4日に40人の宴会をしたい、と。結果は、無断キャンセル。被害に遭った東京・歌舞伎町の飲食店は、
「お金がかかっても、このままだったらダメだ、裁判をやらないと、と思ったんです。繁忙期に予約を無断キャンセルされると非常に困ります」
と相手を訴えた。担当したのは前出・石崎弁護士だ。
「訴状を受け取っているにもかかわらず裁判には来ない。その前に内容証明を、本人にも、実家にも送りましたが無視。裁判を起こしても無視。普通、裁判を起こされたら、会社や家族にも知られて嫌じゃないですか。守るものがあると社会のルールで生きようとするんですが、20代で守るものがないと、こうなります」
裁判所は原告の訴えどおり13万9200円の損害賠償を認める判決を出したが、これをお金にかえるためには被告の預金口座を割り出さなければならず、さらに手間、時間、金がかかる……。
「飲食店の無断キャンセルは数万円の世界。裁判となると最低でも10万円はかかります。そこで私は無断キャンセルの請求サービスを始めました。初期費用を取るとなると、損をしたうえにさらにお金がかかると店側が萎縮してしまうので3割の成功報酬型でやってます」(前出・石崎弁護士)
前出・望月さんはグルメサイト側の問題をこう指摘する。
「簡単に予約ができますが、キャンセルに対しての対策が進んでいなかった」
前出・石崎弁護士も、
「キャンセルの電話に出ない、対応してくれない、そっちが悪いだろう、と言われることもあります。予約のしやすさ、キャンセルのしにくさのミスマッチもあるようです」
それでも泣き寝入りすることなく、弁護士や裁判を通して請求し続ければ、
「お客さん側も、無断キャンセルは請求されるんだ、これはまずいことだと少しずつ認識していくと思います」
と、石崎弁護士は期待する。
冒頭の温泉旅館には後日、被害の原因を作ったという男女3人が謝罪に来たという。彼らの言い分は、元従業員に予約を頼んだ→キャンセルを指示した→その元従業員とは昨年から連絡がとれない……。
前出・田中屋によると謝罪に訪れた人物に請求できるのか含め、弁護士を通して協議するという。「大鷹の湯」(西那須温泉)の飯沼鷹佑専務は「(被害旅館で)集団訴訟という形で対応しようと思っています」と一歩も引かない。
前出・望月さんはこう対策を促す。
「予約時にクレジットカード情報を入力してもらうことも、対策のひとつです。予約サイト側の仕組みで、解決する対策は必須。でないと、無断キャンセルはなくなりません」
電話1本、指1本でキャンセルを伝えれば本来はこじれることはないはず。 客と店側の間に信頼関係があったのは遠い昔の話になってしまった。