「迎えにいったら誰もいない」タクシー業界も悲鳴
「都内のタクシー会社によると迎車予約の2割が電話、アプリ利用は8割。アプリを利用した迎車が当たり前になっています」
と話すのはJapanTaxi株式会社の担当者。
「アプリだとボタンひとつで気軽にタクシーを呼べるだけでなくキャンセルもボタンひとつと非常に便利。電話予約のように再度電話をするような手間はかかりません。電話での予約数は実は横ばいでアプリのお客さんが増えた状況なんです」
配車アプリのシステムは迎車予約の依頼に対し、ドライバーが了承をすることでマッチングされる仕組み。気軽に利用できる一方で、配車アプリで利用した迎車予約での無断キャンセルも増えているという。
「お客さんを迎えに行ったら誰もいなかった、なんてことは珍しいことではありません」
と肩を落とすのは都内で営業する男性タクシードライバー。
「迎車待ちのお客さんが偶然通りかかった空車に乗ってしまうのはよくあることです」(同・ドライバー)
タクシーの無断キャンセルは業界でも以前から問題視されてきた。飲食店などと同様で、ネットの普及とともに表面化してきた、という。さらに、気軽に使えるアプリだからこその新たな問題も起きている。
「複数のアプリを利用していちばん早く到着した車に乗車してしまい、ほかのアプリの予約キャンセルをしない、忘れる人もいるようです」(前出・担当者)
と無断キャンセルを繰り返す例は少なくない。しかし、ドライバーにとっては死活問題だ。
「迎車のうちはほかの客を乗せられないため、目の前でタクシーを待っている人がいても乗せることができない。待っている間は営業できないので、飲食店の無断キャンセルと同じような状況になっています。飲食店同様で罪悪感は低い。それにタクシーを待つほかのお客さんに迷惑がかかることも知らない人が少なくないのでは」(前出・担当者)
無断キャンセルされると時間をかけて迎えにいっても利益はゼロ。乗務員の給与は1日の営業利益による歩合制が多い業界のためタクシー会社だけでなく、乗務員自身の給与に関わるのだ。
アプリでの無断キャンセルが増えればドライバーが迎車の依頼を躊躇するようになり、アプリ自体運営ができなくなる可能性もある。だからといって無断キャンセルで生じた損害を払う客はほとんどいない。
前出・担当者は訴える。
「配車を予約した時点で契約は成立しています。あまりにも悪質な場合はキャンセル料が徴収される可能性もあります。“無断キャンセルはいけないこと”という認識が広まってほしい」
その悲鳴にも耳を傾けたい。