小沢の考える「芸人」
次に、芸人観について。甘いことを言う小沢と、「あまーい!」と叫ぶ相方の井戸田潤。そんな彼らの漫才を見ていると、小沢のキャラクターはこの漫才のために作られたものと錯覚してしまう。しかし、実際は逆だ。
「僕、合コンとかでこういう(甘い)ことばっかり言うんですよ。そしたら本当に女の子が“甘い……”って言ったんですよ」(フジテレビ系『ごきげんよう』2015年12月9日)
これをきっかけに「あまーい!」が生まれた。まず小沢が存在し、次にあの漫才ができたのだ。
他方で、小沢は周囲からいつも同じ「甘い言葉」を求められることに困惑する。しゃべっている途中で疲れてしまうこともある。笑いが生まれるかもしれないのに、なぜ最後までしゃべりきらないのか。彼はこう答えた。
「でもさ、それって頭のなかで想像してるじゃん。想像どおりになりたくないっていうのもある」(テレビ朝日系『ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!』2015年1月17日)
彼にとって芸人であることとは、自由であることだ。他人から自由であるだけではない。笑いを想像し、話を事前に組み立てるような、そんな過去の自分からも自由であること――。それが彼にとっての“芸人”だ。
小沢の考える「友人」
最後に、友人観について。小沢は言う。地球上には約70億人もの人間がいる。そのすべてに会おうとしたら、1秒ずつしか会わなくても、220年かかる。
「でも、俺たちもう出会って何分ぐらいたった? 奇跡。乾杯」(テレビ東京系『ゴッドタン』2014年6月8日)
そんな奇跡のような出会いすべてを、彼は大切にする。出会った人との間に、友人とそうでない人の線は引きたくない。だから友人の数は数えない。
「髪の毛が生えてる人は、自分の髪の毛の数、数えたことないでしょ? それと一緒で、数えるものではない」(フジテレビ系『もろもろのハナシ』2016年10月6日)
そんな小沢にとって、チュートリアルの徳井は特別な存在だろう。「徳井くんが謹慎している間は自分も好きなものを断つ」といった理由で、和田アキ子からの麻雀の誘いを断ったという。
徳井とは、放送作家なども加え、2015年ごろから数名でルームシェアを始めた。自宅は別にあるものの、共同生活を送る部屋をセカンドハウスとして借りているのだ。
徳井にとって、小沢はどういう存在だったのか。交友関係の広さでも知られる小沢が主催するパーティーには、彼を慕う多くの芸能人が集まるという。そんな小沢を近くで見てきた徳井は言う。
「小沢という窓から僕は芸能界を見てる」(TBS系『A-Studio』2016年4月15日)
テレビを通して接するだけの視聴者にとって、小沢は芸能界の窓ではない。しかし、独自の世界観を見せてくれる彼の言葉は、日常を少し軽くしてくれる窓ではあるのかもしれない。
そして、ときに気づかせてくれる。自分もまた誰かにとって、独特の世界観をもった存在、誰かにとっての窓ではないかと。小沢は言う。
「みんな世界観は独自のものだから」(日本テレビ系『おしゃれイズム』2016年8月14日)
文・飲用てれび(@inyou_te)