「もう『レ・ミゼラブル』でアンジョルラスを演じるのが最後というときに、偶然、おそば屋さんでプロデューサーと出会って“今度はジャベール役でオーディションを受けてよ”と言われたり。もちろん自分が行きたいと思った方向へ行けなかったこともあります。でも、出会うべくして出会い、縁に生かされてきました。私の人生は、不思議な力を感じさせるような、面白いエピソードが満載なんですよ(笑)」
自分が面白いと思う作品に出る
では、これからの人生に望むこととは?
「今は、“この役がやりたい!”みたいな欲はもうなくて。“求められるところで役割を果たせればいいかな”と思っているんです。あまりセカセカ、ガツガツするのは性に合わない。仕事が空いたときには“和の心”をもって趣味の世界に生き、優雅な生活を送っていますのでね。毎朝お茶を点て、骨董を愛し、床の間にお花を生けたり能を嗜んだりしています」
絶対に譲れないのは、自分の美意識、そしていい作品を作ろうというこだわり。
「自分が面白そうだと思った作品にしか出たくないんです。例えば、今回の『チェーザレ』は明治座さんが“まじめにいい作品を作ろうとしているな”と思えたから出たいと思いました。昨今、日本はミュージカル・ブームと言われていますけど、世界と比べるとまだまだ。本当にいいものを作っていかないと、ファンを韓国ミュージカルに取られてしまうことになりかねないですよね。この『チェーザレ』のようなオリジナル作品が成功を収められるよう、がんばらなければいけないと思っています」
岡幸二郎 おか・こうじろう 10月10日、福岡県生まれ。大学在学中に『イダマンテ』で舞台デビュー。劇団四季のシーズンメンバーとして3年間活躍後、1994年に『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役をオーディションで勝ち取り、一躍、ミュージカルスターに。同作には'03年〜'09年、ジャベール役でも出演した。そのほかの主な出演作に『グランドホテル』『ミス・サイゴン』『1789-バスティーユの恋人たち-』『ロミオ&ジュリエット』など。フルオーケストラとのコンサートやショーなども精力的に行っている。
ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
明治座が初めてオーケストラ・ピットを使って製作するオリジナル・ミュージカルは、15世紀のイタリアを舞台にした惣領冬実による歴史コミックの舞台化。若き日のチェーザレ・ボルジア(中川晃教)がピサの大学に通っていた青春時代を描く。脚本は、元宝塚歌劇団の荻田浩一、演出は、ドイツ生まれの小山ゆうな、音楽は島健が手がける。4月13日~5月11日、明治座にて上演。問い合わせ:明治座チケットセンター 電話03-3666-6666。詳しい情報は公式サイト(https://www.cesare-stage.com)へ。
【取材・文/若林ゆり】