“スルースキル”ではいつまでもセクハラはなくならない

 イメージダウンするのは、みちょぱも一緒です。バラエティータレントとしてのすばらしさが語られたのは、放送時間の1/3くらいで、あとは「いいホステス」とか「男を立ててくれる」「傷つけない言葉に変換してくれる」「セクハラしても怒らない」というように、まるでカメラの回っていないところで、男性に媚びて芸能界を渡っているような印象を受ける言われ方ばかり。みちょぱに仕事が途切れないのは、番組でいい仕事をするから。それ以上でもそれ以下でもない気がします。

 放送終了後に、みちょぱをさらなる悲劇が襲います。SNSで「セクハラ対応がすごいみちょぱをほめるのが、気持ち悪い」という意見が噴出したのです。みちょぱはツイッターで、

《スルースキルをいつの間にか身につけたからこそ、そこを褒められたのは純粋にうれしかったよ まあ要するにトークのスキルも笑いのスキルもないただのおやじは女に向けて下ネタ話すなってこと》(一部抜粋)

 とツイートをしたのですが、この「スルースキル」という言葉が、新たな火種となってしまうのです。

 男性からセクハラされたら、スルーせよという考え方は、ひと昔前にありました。セクハラがいけないという考え方が今ほど確立していない時代でしたので、苦肉の策だったのでしょう。しかし、この方法ではいつまでもセクハラはなくなりませんし、スルーできない女性が責められたり、さらにひどいセクハラに遭うことにもなりかねない。こうなると、みちょぱは「女性を追い込む女性」とみなされる可能性も出てきます。

 これはみちょぱがどうこうではなく、「セクハラに嫌悪を持っている女性が多い」ことを読み切れていない、制作側の問題ではないでしょうか? アンガールズ・田中が「みちょぱセクハラでもしよう」と発言したとき、テレビには「みちょぱセクハラ」という字幕がつき、最後にはハートマークがついていました。この事実ひとつ取っても、制作側がセクハラを甘く見ていることがわかります。

 本来なら、手放しで喜ぶべき「褒められ企画」だったのに、もらい事故をしてしまったみちょぱはお気の毒としか言いようがありませんが、今後も快進撃は続くでしょう。ヤバい男はときどきは無視して、頑張ってほしいと思います。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」