濃密な話がひたすら前に進んでいく

エスム:実は『おしん』の第1回って、山形の小林おしんたちは出てこなくて、1983年当時の大人たちがワーワー騒いでいるばかりで、乙羽信子さん演じる老おしんがほんのちょっとだけ映るという、初めて見る人の度肝を抜く始まり方なのよね。

ひろ:「あれ? この人たち、誰なんだろう?」と思いましたもん(笑)。

成田:少女時代のおしんが登場するのは、なんと第4回の途中からですが、もうそのころにはおしんの波瀾万丈の人生がどうだったかが気になって、先を見たくてどうしようもない状態になっているという(笑)。

エスム:そして無駄な場面と回想シーンがなく、濃密な話がひたすら前へと進んでいくの。しかも毎回いいところで終わるし、週をまたぐ回では「おしんちゃん、来週どうなっちゃうの?」という場面で終わるんだよねぇ。最近の朝ドラって「ネタがなくなったのかな?」と思うような時間つぶしな展開があるけど、それが一切ない!

ひろ:あとは歴史のトピックが入ってますよね。好景気と不景気、関東大震災、太平洋戦争とか。

エスム:それがおしんの人生に絡んでくるのよね。だから登場人物の単なるわがままや心変わりではなく、◯◯があったからすべてを失ってしまったという展開になって、「この人ならこういうときにこう動くはず」と、その行動に納得できるんだよねぇ。

成田:登場人物の言動や行動で「やっぱりあの人の子だ、遺伝してる」と思うこともしばしばありますよね。なので『おしん』をずっと見ていると、親戚のような気分になって「あの人の家は、いろいろあったから……」みたいな感じになります(笑)。

エスム:あとは年齢だったり、見る立場によって変わる。若いときは「おしん、頑張れ!」と見ていたけれど、最近は乙羽おしんの気持ちが沁みるの……(笑)。

成田:わかります(笑)。そして見直すとディテールに気づいたり、「ここで、あのネタが仕込まれていたのか!」と脚本と演出の妙味に唸りますよね。

エスム:今回、見直してみて思ったのは、おしんは我が強いということ、そして意外と冷たくてお友達がいない、ということ。目上の人には可愛がられるんだけど、同年代の世話になった人にお礼とかあんまりしないのよね、おしん(笑)。

ひろ:たしかに! 僕はおしんが佐賀で世話になった義兄嫁の恒子が好きなキャラなんですけど、お礼くらいしてほしかったな……。