「店を開けてるほうもよくないけど、本当に来ないでほしいです……」
都内に住む20代の女性は、自身の勤め先の状況をそう嘆いた――。
東京都では4月11日からキャバレーやナイトクラブなどの遊興施設、大学・学習塾、運動・遊戯施設、劇場、集会・展示施設、商業施設の6つの業態を対象に休業要請が実施されている。
「劇場とライブハウスは、もうどうにもやっていけないですね。2月くらいからずっとイベントの中止が相次いでいて、3月中旬くらいはどこも休業状態でした。有名ライブハウスですら潰れてしまっている状態なので……」(音楽誌ライター)
ライブハウスなどのエンターテインメント業界だけでなく、さまざまな業界でコロナの影響は強いが、なかには逆にバブル的な“好況”となっている業種もあるという。冒頭の女性が働く場所がまさに該当するようで、
「美容外科クリニックは今、すごく混んでますよ。もう予約が詰まってパンパンって言っていいくらい。普段の倍くらいですね。コロナが怖いので休みの希望を出したんですけど、私以外にも休みたい人がたくさんいて、お客さんが多くて対応できなくなるからって申請は却下されました……」
コロナが「いい機会だから」
なぜいま、それほどまでに美容外科の需要が増えているだろうか。大手美容クリニックのホームページには《新型コロナウイルス感染防止に十分に注意を払いながら営業させて頂きます》という文面があった。
そのほかの多くのクリニックも同様の文面がホームページに記載されており、美容クリニックの多くが“気をつけながらも”通常通り営業していることが伺える。
「大きめの美容外科手術をする人が多いですね。美容整形の施術を受けてから赤みや腫れなどが取れ、肌の状態が元に戻るまでの期間を“ダウンタイム”と言いますが、今コロナの影響で在宅勤務、もしくはお店が休業となっている人が“いい機会だから”っていらっしゃるんです……」(前出・美容外科クリニック勤務の女性)
休業要請の対象には“夜のお店”も含まれている。
「うちのクリニックは、キャバクラやホストに勤務しているお客さんも多い。そういう人を差別する気持ちはないけど、実際に夜のお店が感染源となっているケースが多いじゃないですか。クリニックも“3密”になりやすい場所です。いまこれだけ混んでいるので、すでにコロナにかかっている人もお店に来ていると思ってます。
大手の美容クリニックではすでにスタッフに感染者が出ました。その人の感染経路はわかりませんけど、お客さんからもらった可能性もあるんじゃないかと思ってます。そのクリニックは4月末から営業を再開しますし、系列店は通常通り営業していますね」(同・美容外科クリニック勤務の女性)
別のクリニックに勤務する女性も、
「コロナの騒ぎが大きくなってからも、1日に何件も手術が入っています。目を大きくする目頭切開だけでもものすごく多い。ダウンタイム期間は痛みがあったりしますけど、その間にコロナにならないといいですね……としか言えない。
シワ取りでヒアルロン酸を注入しに来る人もいるけど、今はマスクをするだろうし、コロナが収まったころには今回の効果も消えてるんじゃないのかなって思う。本当は休みたいんですけど、先生は“休業したら売り上げが減るだろ?”って。“何、バカなこと言ってんだよ”って感じでした。休んだら私は欠勤扱いになってしまいます。実家にも今は帰れないし……」
前出の美容クリニック勤務の女性は、
「お客さんは多いですけど、キャンセルされる人も同じくらい多いんです。こういうクリニックに勤務しているので、美容整形は不要ではなく必要だと思いますが、不急のものだと思います。いまは控えてくれるとうれしいですね」
以前と比べて、どのくらい来院する人が増えているのだろうか。国内だけでなく海外にも事業を展開する『湘南美容クリニック』に問い合わせたが、期日までに返答はなかった。
「美しくありたい」とは、女性の永遠の願い。しかし、そんな“美”も命あってのもののはず。今は老若男女すべての人が、ウイルスに対してできるだけの対策をとって生活すべきだろう。