アフター・コロナの時代は、感染症、自然災害、経済変動など、ますます不確実性が増大していく時代となる。だから、自分のキャリアのリスク管理戦略を考えておくことが必要だ。

 その答えを、いろいろな分野に手を出して、いろんなことをできるようにしておくことだと考える人もいると思う。しかし、それは間違いである。いろんなことが中途半端にできる人を欲しいという会社はない。転職市場では、本当のプロフェッショナルが求められている。

 従来の日本企業で行われてきたような営業→SEや、SE→経理といったゼネラリスト型人事は、何のプロでもない、売るべきスキルを持たない社員を作りだすことになり、労働者のリスクを増大させてきた。

 ヘッドハンターから、「あなたは何ができますか?」と聞かれると、多くの日本の大企業の部長が「○○会社の部長ならできます」と答えたという笑い話を聞いたことがあるが、これこそがゼネラリスト型人事の弊害である。

専門バカとしてプロの道を究める

 新卒一括採用され、会社への忠誠を誓わされ、脈絡のない人事異動を続け、入社15年経つと課長に昇進、25年経つと部長に昇進してきたという人には、社外でも売ることができる専門的スキルが身につかないのである。こうしたゼネラリストの持っている能力は、社内人脈とその調整能力だけで、特定分野の仕事のスキルは浅いものでしかない。

 その一方で、地味かも知れないが、経理一本で25年やってきた経理マンは立派なプロフェッショナルだ。業種が変わっても、同じ経理なら仕事ができる。自動車エンジン設計のエンジニアを30年やってきた人も、同じエンジン設計の分野での転職が可能である。

 つまり、アフター・コロナの世の中では、プロフェッショナル化を目指し、専門バカと言われるぐらいに自分の道を突き詰めていくことが正しい道となる。


植田 統(うえだ おさむ) 弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授
1981年に東京大学法学部卒。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。アメリカ・ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)入社、経営戦略コンサルティングを担当。その後、野村アセットマネジメントやレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を経て、弁護士になる直前まで、アリックスパートナーズに勤務し、再生案件、1部上場企業の粉飾決算事件等を担当。2010年弁護士登録を経て、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。現在は、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義し、数社の社外取締役、監査役を務めている。