「生き残った柱のことよりも、なぜほかの柱が死んだのかというほうが重要です。
炎柱・煉獄杏寿郎は、柱でも1人では上弦の鬼には敵わないことを伝えるため早々と倒れたといえます。霞柱・時透無一郎は若年ゆえ、経験のなさから敗北。蟲柱・胡蝶しのぶはもともと自分の死を組み込んだ戦略を立てています。
岩柱・悲鳴嶼は、短命のしるしである痣の出現を得たため、治療薬を拒否して若い隊士に譲ります。もし注射をしていたらあの場で死ぬことはなかったかもしれません。
蛇柱・伊黒小芭内と恋柱・甘露寺蜜璃はお互いに“生まれ変わったら添い遂げたい”という愛情がありました。最終回の伏線となるためにも、2人とも倒れる運命が設定されていたと見立てることができます」
冨岡義勇については、前出の渋井さんは、「作中で“強い者は警戒されるが弱い者は警戒されない”という台詞が何度か出てきます。彼が生き残ったのは、最強ではなかったからこそ、といえるのでは」と見立てる。
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最後に、『鬼滅の刃』がここまでヒットした理由を渋井さんは、こう分析する。
「炭治郎はこれまでの少年漫画のどの主人公よりも優しく、鬼側にも感情移入していきます。鬼を単なる悪役とするのではなく、悪者もそこに至るまでに悲しみを背負っていることを全編を通して説いています。勧善懲悪の少年漫画にあって今の時代にとても合っていると感じますね」
10月には映画化も控えている。『鬼滅の刃』の快進撃は今後も続きそうだ。