ハマったら抜けられないため自嘲的に“沼”にたとえられるが、それだけの魅力を秘めている。その原動力は冒頭の淑子さんのようなファンの口コミなのだ。作品を応援したい、多くの人に知ってもらいたいと有志が集まった非公式ファンクラブの活動もある。
BLドラマファンの「愛」がすごい!
そのひとつ『2GETHER the series JapanFC』では、
「活動はボランティアで作品や俳優のインタビューに日本語字幕をつけたり、各種出演情報などを投稿します。今後は主演の2人を中心にバースデーイベントの企画や、俳優陣がファンミーティングで来日すればそのサポートもしたいと考えています」(担当者)
ファンひとりひとりの作品、俳優への愛が人気を支える。
「一緒に盛り上げたい。私たちは作品が大好きなんです」(bebeさん)
タイBLドラマを日本で視聴するには、ドラマ公式ユーチューブチャンネルや有料の配信のほか、DVDがある。いち早く作品の日本語版販売に踏み切った株式会社アクロスの松メイさんは、
「日本ではまだ知らない人もいますが、注目度は上がっています。今後も新たなコンテンツの展開を続ける予定」
作品は社会をも動かす勢いをみせる。前出・守記者は、
「タイでも同性愛への差別や偏見がなかったわけではありませんがドラマを通し受け入れられてきたように思います」
前出・前川さんも、
「私自身もゲイ男性ですが、タイBLドラマはゲイ男性もハマっている印象があります。描かれる心理やシチュエーションはゲイ男性として共感できるものも少なくありません。社会へのメッセージ性、同性愛嫌悪の問題なども単なる作品の味つけ、設定とされるだけでなく、繊細にきちんと描かれています」
前出・bebeさんは、
「BLドラマを見るまでLGBTや性的マイノリティーのことは知りませんでした。ドラマにはトランスジェンダーの人、レズビアンの人も多く登場します。性的マイノリティーについて考えるきっかけになりました」
ファンタジーであるBLドラマの世界、アクセスするきっかけはひとつではない。
「作品はいろんな楽しみ方ができると思います。作中の音楽、衣装、文化。タイは大学に制服があり、放課後や寮では私服。そのギャップが非常にいいです。屋台の食事や街並み、日本とは違う文化も見どころ」(前出・堀さん)
ファン層は圧倒的に女性だが、その魅力は国、性別、年齢を超え世界中へと広がる。お気に入りの作品を見つけ、そのよさを発信したい。