離婚するまで、虐待は続いた
次のケースを紹介します。由紀さん(10代・仮名)の両親は、不仲でした。父親は結婚して間もないころから浮気をしていて、「深夜に甘い匂いを漂わせて帰ってくる」など、就学前の娘でさえ「おかしい」と気付くような行動を取っていました。
しかし、母親は夫の浮気については追及せず、見て見ぬふりでした。なぜ母親はそんな態度をとっていたのか? 由紀さんはこんなふうに話します。
「浮気には気づいていたと思います。でも母親は中卒だったので、もし離婚しても、自分や子どもを養っていけるだけのお金は稼げないと思って、我慢していたんじゃないのかな」
夫婦ゲンカが多く、両親の不仲は、間接的に由紀さんにも影響を与えていました。両親は離婚するまで由紀さんに暴力や暴言を繰り返したため、由紀さんは精神科への入退院を繰り返すことに。そのため、学校にもあまり通うことができませんでした。
結局両親は、由紀さんが中学生のときにようやく離婚。由紀さんは父親に引き取られましたが、もし金銭的な不安がなければ、母親はもう少し早く離婚を決断できたかもしれません。そうすれば、由紀さんが受けた虐待も、もう少し軽くて済んだ可能性も考えられます。
「お金がない」ために離婚をあきらめる母親、または、なかなか離婚に踏み切れない母親を見つめる子どもたち。もちろん、お金以外にも、母親が離婚できない・したくない要因はあったかもしれません。
しかし、女性に稼ぎがないこと、お金がないことが、不幸な結婚を無理に続ける一つの要因になっていることは確かです。