離婚を考えている「お母さん」たちへ
筆者自身も、子どもが0歳のときに離婚しています。当時は妊娠して会社を退職し、フリーになったばかり。経済的には大変不安定で、やはりお金のことが心配で仕方がありませんでした。それでもなんとか決断できたのは、実家に身を寄せられる読みがあったからですが、もし親と関係が悪かったりしたら、もっともっと悩んだと思います。
よく言われることではありますが、これから家庭をもつことを考えている女性には、どうか「仕事を続ける」ことを忘れずにいてほしいと願います。夫の稼ぎがあれば大丈夫だと思っても、離婚や離職、病気、事業の失敗等々、リスクはたくさんあるのです。
一方で、いま既に離婚を考えている母親たちには、お金がなくても離婚に踏み切る人たちがいることも、知ってもらえたらと思います。
筆者が取材した中には、たとえば「夫が息子に初めて手をあげた瞬間に離婚を決め、翌日には離婚届を出して、一時期は生活保護を受けて生活を立て直した」という母親や、「独身時代のへそくりを夫に使い込まれ、最後の10万円だけ握りしめ、子どもを連れて家を出た」という母親もいました。
この2人の母親は、どちらも小さいときに親の離婚を経験しています。その経験から、子どもにとって必ずしも経済環境を優先してほしいわけではないことや、親が笑顔でいられることの大切さを知っていたのでしょう。
国や社会の子育て支援も、もっと手厚くなるとよいのですが……。ひとり親への支援ももちろん必要ですが、あらゆる家庭で子育ての負担が軽くなれば、離婚も減らせることでしょう。誰だってできることなら、子どもがいる離婚は避けたいのですから。
大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。出版社、編集プロダクションを経て、現在はノンフィクションライターとして活動。そのほか、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。多様な家族の形を見つめる著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(ともに太郎次郎社エディタス)など多数出版。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。