震災、芸人として「覚悟」を決めた
いまや、サンドウィッチマンは「好感度」ナンバー1の芸人。長らく明石家さんまやビートたけしがトップに君臨していた「好きな芸人」ランキングの牙城も崩した。
現在でも骨太のネタで笑わせ続けているというのが大前提だが、その大きなきっかけになったのは東日本大震災だろう。
東北出身であるばかりか、地震発生時、被災地の只中でロケをしたこともあって、先頭に立って被災地の窮状を訴え、チャリティーイベントなどを開催。その取り組みは現在も継続している。
「震災の色がついちゃうと、芸人として笑えなくなる」のではないかという逡巡もあったという。それでも覚悟を決めた。「やり方は年々変えながらも、ずっとやっていきたい。それが命を生かされた僕らの使命」(『朝日新聞デジタル』2017年3月9日)だと。
そうした中、もうひとつの転機となったのは思わぬ番組だった。
「震災で“いい人”イメージがついちゃったんで、あれでめちゃくちゃにしてやろうと思った」(フジテレビ系『直撃!シンソウ坂上』2018年11月1日)
そう富澤が回想するのが『バイキング』(フジテレビ系)での「地引網クッキング」だ。
長年続いた『笑っていいとも!』の後継番組として始まった『バイキング』は、開始当初は『いいとも!』のお笑い色も引き継いだ番組だった。そんな初期『バイキング』でもっとも話題を集めたコーナーのひとつがサンドウィッチマンによる「地引網クッキング」だった。
毎回、生放送で各地の海岸を訪れ、地引網で取れた魚で料理するという内容。しかし、生放送ゆえ、天候が悪かったりしてうまくいかないときも少なくなかった。そんなとき、彼らは「今日はヤラセをやるぞー!」「スタジオのみなさんも、テレビを見ているみなさんも、共犯者です!」とカメラの前で用意した魚を網にかけたりするのだ。集まった地元の人たちにも容赦なく乱暴にツッコんでいく。
その「ウソ」のない放送に、サンドウィッチマンは絶大な信頼を得た。そして当初の思惑とは裏腹に好感度もさらに上がっていったのだ。