お互い適当な距離感でやりませんか?
そんなホームレスたちも、一般人が彼らを怖がるのと同じように、身の危険を感じながら生きているという。
「コロナ禍でも話題になりましたけど、自警団的な行動をとる人たちがいますよね。危険な正義感というか、“役に立たない連中に対して警察は何もしないから、代わりに自分がやってやる”という。
アルコール依存症や盗癖のある人もいます。ただ、本当に悪い人は捕まってしまいますから、極悪な人はほとんどいません。一般社会と彼らの社会の中にいる悪人の割合ってそんなに変わらないんです。ただ、人付き合いがうまくできなかったり、とっつきにくい人が多いのは事実。彼らを見てきた僕からすれば、お互い適当な距離感でやりませんか? と思ってしまいます」
世界的なコロナの流行により、これからどんな不況が襲うかも未知数の日本。自治体などの施策により、これまで減少してきたホームレスだが、この先、どんな時代が待っているのだろうか?
「最悪のシナリオでは、国が貧乏になり生活保護にお金を回せなくなると、ものすごくホームレスは増えるでしょう。今は普通に働いている人たちも、失業して国の援助もなくなればホームレスになってしまう可能性が高くなると思います」
Q.生活にかかるお金はどうやって稼いでいる?
「“ホームレスは働いていない”と、彼らを否定する人がいますが、ほとんどの人は働いています。いちばん多いのはアルミ缶集めという『廃品回収業』です」
厚生労働省が’16年に行った『ホームレスの実態に関する全国調査』では、55.6%が仕事をしているという結果が出ている。実際に彼らと同じ、アルミ缶集めの仕事を体験した村田さんは、
「1日に3000円を稼ぐのがマックスですね。1kgで100円を目安として、30kgを集めるのは初心者には大変です。自転車を使って回収するルートを確保したり、マンションの住人に話を通しておいて分けてもらうとか。
ただ、これも資源ごみとして捨てたものを勝手に持っていったりもするので、厳密に言うと窃盗に当たるんです。実際、僕も拾っていて怒られたこともありました」
確かに、街中で空き缶を詰めた袋を山のように積んでリヤカーで運んでいる姿をよく見る。しかし、それだけの苦労をして“日当”3000円とは──。これに対して、路上に座ってお金をねだる人はほとんど見かけない。
「日本では、ほぼ見ないですね。これは軽犯罪法第一条に引っかかる、いわゆる犯罪行為なんです。まあ、彼らがそれを理由にやっていないのかはわかりませんが、ホームレス同士で“そんなみっともないこと、やめておけ”という暗黙の了解のようなものがあります。
食事は炊き出しなどでまかなっている人は多いです。ただ、生活保護や人からの施しは受けないという、プライドがある人も少なくありません」