生涯拘束される国産豚も
採卵鶏と同様、食肉鶏もまた飼育環境の劣悪さで後遺症が報告されている。糞尿(ふんにょう)が一面に敷かれた閉鎖空間で数千羽がぎゅうぎゅう詰め。その飼育密度はEUの1.7倍、ブラジルの1.8倍だという。
また、過度な品種改変により、本来150日かけて大人になる鶏が、生後50日で大きくなり、殺されて肉になる。急速に成長する体に作り変えられ、心筋梗塞や腹水症、成長痛で苦しんでいる。
私たちが食べるのは生後40~50日前後でまだピヨピヨと鳴くひなの肉だという。
「ワクチンと抗生物質を与え、ギリギリ大量死しない環境です。厚生労働省によれば鶏肉からの薬剤耐性菌の検出率は国内59%、海外34%。2050年になると1千万人が薬剤耐性菌で死ぬと予測されていて、この数は今のがんの死亡者数を上回ります」
羽から足が生え、脳みそが変形するなどの先天的異常を持つ鶏の割合がこの10年で急増したという研究もある。
「日本では70日以上の飼育が条件で、飼育面積も決められた地鶏であれば比較的、健康で過度な品種改変もしていない鶏肉と言えますが、国産より、ブラジル産の鶏肉のほうが動物にはやさしいですね」
豚肉では、『妊娠ストール』という飼育環境が問題になっている。世界的に廃止が進む中、日本の88・6%の養豚場が採用したままだ。
「子取り用の母豚をストールという拘束施設に収容する様式です。身動きがとれないので、目の前の鉄棒を噛み続けるなどの異常行動を起こす。足元は糞尿にまみれて、気が狂う。うつ状態で無反応になることもあります」
豚は群れでの生活を好む、清潔好きな動物。糞尿は餌場から最も遠い場所で行う。
「仲間同士で寄り添い、自由に歩ける『群れ飼育』は、母豚の病気が減り、子豚の死亡率も下がった。不要な殺処分がなくなり、生産を増強できたという報告もあります」
欧米に続き、タイや中国の企業もストール廃止を宣言し、群れ飼育に切り替えている。
「ハムなどの加工品はEU産を買うと、自ずと妊娠ストールフリーになります。なぜ国産を選んでいたのか、もう1度考えてほしいです」
※飼育面積の単位を修正しました(2020年7月15日)