ちなみに、ヘキサゴンファミリーには野球と縁のある人が多かった。野久保は高校時代、プロ野球のドラフト候補だったし、元木大介はプロ野球の一流選手だった。ただし、番組では縄跳び企画でアキレス腱を切るなど、元アスリートらしからぬ「おバカ」ぶりを発揮。もう本業には戻れないのではと心配してしまったが、その後、少年野球の監督として世界一になり、現在は古巣の巨人でヘッドコーチをしている。現役時代は「隠し球」が得意だったし、野球的なアタマはいい人なのだ。

結婚後の天国と地獄

 そして、誰よりも「野球」絡みで飛躍したのが里田まいだ。夫はメジャーリーガーの田中将大投手。結婚を機に、ジュニア・アスリートフードマイスターの資格を取ったり、英会話をマスターしたりして、球界有数の賢夫人の名をほしいままにしている。

 そんな里田に「野球選手の妻」としての心得を説いたともされるのがスザンヌ。ひと足先に当時ソフトバンクの斉藤和巳投手(現・解説者)と結婚したが、4年後に離婚した。斉藤はとかく女癖の悪さが報じられてきた人で、これが2度目の離婚。スザンヌは男を見る目がなかったのかもしれない。

 ほかに、男で失敗した「おバカ」といえば、矢口真里もいる。ただし、この人の場合は自らの「クローゼット不倫」で離婚したわけで、自業自得というほかない。

 というわけで、生き残りのポイントはやはり、賢さ。木下には結局、それが不足していたということだろう。

 皮肉なのは、その点でも前夫・藤本敏史に置いていかれてしまったことだ。というのも、藤本はここ数年『プレバト!!』(TBS系)の俳句企画で活躍中。名人のひとりに認定されており「おバカ」キャラを卒業しつつある。

 木下もママタレとしてカリスマぶりをアピールすることで、イメチェンを図っていたのだろうが、そこから賢さはあまり伝わってこなかった。そのあげくの「タピオカ恫喝」騒動である。

《出方次第でこっちも事務所総出でやりますね》

《いい年こいたばばあにいちいち言う事じゃないと思うしばかばかしいんだけどさー》

《謝るとこ謝るなり、認めるとこ認めて、筋道くらいとおしなよ》

 と、彼女が恫喝に使ったのはインスタグラムのダイレクトメッセージだった。それを相手にバラされたわけだが、こうした経緯もなかなか象徴的だ。かつての野久保がそうだったように、SNSでのやらかしは芸能人にとって致命傷になりかねない。

 そもそも「おバカ」ブーム自体、番組の演出によるところが大だった。だからこそ「お」という接頭語つきで愛されたのだ。番組が終わっても、そのままやっていけると油断していると、いつしか「お」が取れ、ただの「バカ」になってしまうということでもある。

 さらにいえば、クイズで「おバカ」な回答をするのと、人生で「バカ」をやらかすのは別モノだ。彼らの生き残りバトルは、そんな当たり前の現実を教えてくれる。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。