家族がいようがいまいが、死ぬときはひとり

 わたしが体験した2つの孤独死を紹介したい。

 1人目の方は、ずっと戸建ての自宅でひとり暮らしをしていたAさん83歳だ。足が悪く杖を手放せない生活をしていたが、昨年、手首を骨折し、ひとり暮らしに自信がなくなり、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に移転した。安心を求めて移転したわけだが、入居から1週間たったある日、お風呂場で亡くなっているのが発見される。

 訃報を聞いたときはショックでわが耳を疑ったが、よく考えてみると直前まで普段どおり過ごし、あまり苦しまずにスーッと逝けた幸せな死に方だったのではないかと、会のスタッフと顔を見合わせ、うなずきあった。

 サ高住とはいえ、同居人がいない限り、倒れてすぐに発見されるのが難しいことを彼女の死から教わった。

 2人目は、先月、孤独死したBさん85歳だ。都内のマンションにひとり暮らし。わたしたちの共同墓を契約していたことから、彼女の姪が連絡してきたのだ。その姪の話によると、同じマンションの住人が、新聞がたまっていることに不審を抱き、警察に連絡。警察が鍵をこじ開け室内に入るとBさんが亡くなっていたという。事故、事件性はなく、死後10日ほど経っていたらしい。

 孤独死による臭いを気にする人がいたら、新聞をとることをお勧めしたい。まず、1か月放置されることはないだろう。

 70代になったひとり身のわたしは、最近、つらつら思うことがある。最期の時をどのように迎えたいかは、もちろん人それぞれだと思う。しかし世間で嫌われている孤独死は、ある意味、高齢ひとり身の人にとったら、理想的な死に方ではないかと。

 お二人とも、見事な死。家族がいようがいまいが、死ぬときはひとりだ。死の状況だけを見て、死んだ人の幸・不幸を判断するのは、失礼ではないだろうか。

 それから、とても残念だったのは、Bさんは、生前に共同墓に入る契約をしていたにもかかわらず、実際には、親族により先祖代々のお墓に入れられてしまったことだ。


<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『老後ひとりぼっち』『長生き地獄』『孤独こそ最高の老後』(以上、SBクリエイティブ)、『母の老い方観察記録』(海竜社)など。最新刊は『老後はひとりがいちばん』(海竜社)。