「春馬くんはね、ウチの店に10年ぐらい通ってくれていました。それがここ1年ほど、まったく来なくなっていた。ちょっと心配になって、春馬くんのマネージャーさんにメールをしたばかりだったんです。
春馬くんが元気ないなら、ウチでパンづくりでもして気分転換をしたらどう? って……。ちょうど亡くなる2週間前のことです」
そう静かに語るのは、パン屋の男性店主。メールの返事もなく、心配していた矢先の訃報だった。
「春馬くんのマネージャーさんが7月22日に来てね。春馬くんが好きだったシナモンロールを10個、買って行かれました。春馬くんへのお供えと、事務所のみんなで食べて供養するためだそうです」
店内には三浦さんのサインや、夫婦と三浦さんの3人で撮影した写真が飾られている。いつも笑顔でパンを買いに来ていた三浦さんから“お父さん、お母さん”と呼ばれて親しい間柄だった。
「ウチにはたくさんのタレントさんに来ていただいていますが、その中でも、ウチの妻は春馬くんを特別にかわいがっていたんです。だから……」
そう話しながら店主が視線を向けた先に、先ほどまで立っていた“お母さん”の姿は、もうなかった。
「……メシでも、食いに行ったんじゃないかな……」
“お母さん”の胸中を察する“お父さん”の言葉が、悲しく響いた。
売れっ子にも関わらず、ひとりバイトをしていた三浦春馬さん
三浦さんはNHK朝ドラの『あぐり』で、7歳から子役としてデビュー。20年以上も芸能界に身を置いていた。すでに人気俳優として活躍していた時期には、こんな姿も。
「10年ぐらい前かな、春馬くんはすでに売れっ子で、役者だけで十分に稼げていたはずなのに、なぜか飲み屋さんでバイトをしていたんです」
以前から三浦さんと知り合いで役者仲間でもあったという男性は、記憶を手繰るように思い出を明かす。
「春馬くんがバイトしていたその飲み屋さんに行って、店のお客さんがいなくなった深夜に、春馬くんのほうから急に“腕相撲やりましょう”と言ってきたんです。私は身体が大きくて、腕の太さは彼の倍はあります。
腕相撲も今まで負け知らずでしたので、彼との勝負もナメてかかったら、コロッと負けてしまった。春馬くんって見た目は細くて気弱そうにも見えますが、実はそうとう鍛えていたようです。
その後、私は本気を出して勝ちましたが、すると“もう1回やらせてください!”と悔しそうに言うんです。そんな負けず嫌いな一面もありました。子役あがりの“役者エリート”でもあったから、普通の生活に憧れていたのかな。それとも、真面目な彼のことだから、常に一般の人の心も忘れたくなかったのかもしれませんね」